●Vol.1…ジェロム・レ・バンナの巻
わしがジェロムを取材したのは02年の10月だった。
この年は「サップ旋風」が格闘技界を席巻した年だったね。
“K−1の象徴”といわれたアーネスト・ホーストを破って、彼が最も勢いに
乗ってた時だ。そのムーブメントのなか、最も見たいカードとして
挙げられていたのが、サップ対ジェロムだった。
そんな時代の話ね。
この日は公開組み合わせ抽選会の翌日で、いろんなメディアが取材に来ていた。
テレビでよく見るアナウンサーや、ちょっと名の知れたスポーツライターなど
たくさんいたね。わしは、スポーツ専門誌じゃなく情報誌の編集者だ。
知り合いは一人もおらん。あれは寂しかった…。
各社にそれぞれ時間が与えられていて、自分の時間がきたら
選手の取材ができるという形だ。取材する選手はあらかじめ予約するシステムで、
当然、注目度によってバラつきがある。
つまり、人気選手には取材が殺到して、各社順番待ち状態(取材時間も短い)だが、
そうでもない選手の部屋にはあまり人が来ない(時間たっぷり)というわけ。
わしの記憶で、当時の取材混み具合を万博風に説明すると
●サップ…………日立グループ館/一番人気。多分全社が取材オファーしてる
●武蔵……………長久手日本館/地元だけに取材はなかなか多い。
●バンナ…………トヨタグループ館/取材はかなり多い。結構待つ
●ハント…………三井・東芝館/まあまあ。たまに暇そうにしてた
●セフォー………キッコロゴンドラ/思ったより人気があった
●アーツ…………夢見る山/う〜ん、ボチボチ
●シュルト………北欧共同館/人気はいまいちか…
●レコ……………瀬戸会場/ごめんね、ブリッツ
結構待たされたが、やっとわしらの番が来て、バンナの待つ部屋へ。
なんかバンちゃん、機嫌悪そう。後から聞いたのだが「サップについてどう思う?」
という質問が多かったらしく「ワイはバンナや。ワイの話しをせえや」と
怒っていたらしい。
そりゃそうだ。分かっていたよ。でも仕事だからわしも聞いたさ。
「あの〜、何回も聞かれてる質問だと思うけどサップって…」
あ、怒った? バンちゃん? 殴らないでね、死んじゃうから。
「パワーはあるわな。あーだこーだ。でもワイの方が強いで。あーだこーだ」
意外と普通に応えてくれた。
サップのこと聞いたら「じゃかあしい。ノーコメントじゃ。このハゲ」って
言われたところもあったみたいだから、わしは運が良かったんだな。
一応最初に「わるいなバンちゃん、何度もぶつけられた質問しちゃって」と
謝ってから質問したのが良かったみたい。
バンちゃんは緊張感のない奴だった。わしが取材しているのに
いきなり食事を注文しだしたからな。そんなにわしの質問はつまらんか。
きついよバンちゃん。
しかも「きつねうどん」。
おいおい、バンちゃん。フランス人なのにうどんって、そんなエキサイティングな
ボーイだったのかい? 通訳のお姉さんに聞いたら、大好物だそう。
バンちゃんは自信満々って感じで「誰にも負ける気しない」って言ってたよ。
分かるわ。もう腕とかすげえもん。なんつうか、ハムですよ、ハム。
別所哲也さんがもってきたハムですわ。太い太い。
そういや、サッカーのこと聞いたら「全く興味ない。知らん」って言われちゃったよ。
フランス人なんだからサッカー見ようよ。あのころ強かったよ。おたくの国。
あ、セコンド陣のひとりはジダンの友達だった。すげえウソ臭かったけど。
その「ジダンの友達」の横にはジル・アーセンがいた。
高田延彦の引退試合の日に、桜庭と戦ったあのアーセンだ。
この時はまだ桜庭と戦う前。
その後このアーセンが桜庭に殴られて亀さんのように丸くなるとは
わしはこの時知る由もなかった…。
おいおい、アーセンで締めちゃったよ、わし。
まあいいや。
バンちゃんの巻でした。
この日わしはサップとハントも取材したのだが、それはまたいつかね。

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思い出の取材 vol.1「ジェロム・レ・バンナ」 へのコメント一覧
ってかk-1の12月の決勝トーナメントの時に、誰が優勝するか予想大会開いて下さい