大荒れの試合、残ったのは何ともいえない空虚感。
イングランド 1−0 エクアドル
スーパースター軍団といわれるイングランドだが、そのブランドに見合った
サッカーはいまだに展開されない。あれだけ魅力的な中盤をそろえながら
試合内容は退屈そのもの。
ただ、全く危なげなく勝ち進んでいる。負けそうだった試合は、ただの1度もない。
強いのは間違いないようだ。
エクアドルは最後のひと踏ん張りがなかったか。
点を獲りに行く時は、もっとリスクを負って、勇気をもって前に出るべきだったか。
普通に強いチームが勝ったという、この試合。
ドラマは何もなかった。
ただ、イングランドは強い。それは間違いない。
ポルトガル 1−0 オランダ
乱れ飛ぶイエローカード。
ボーダーラインが破壊され、容赦なく繰り出される悪質なファウル。
この試合は結局1点を先に獲った方が勝ちだったのだ。
デコとマニシェによる素晴らしい先制点を挙げたポルトガルは
実はあの時点で勝利を手にしていたのだ。
あとはもう無法地帯。ピンチを迎えたら殺人タックルで潰す。
ハイクロスには思い切り体をぶつける。
何度か来るチャンスも互いに得点につなげられない。
イライラが募っているせいか、シュート、パス共に精度を欠いた。
足がかかると「さあ、カードを出せ」とばかりに、もんどりうって倒れた。
もうあの段階から得点をあげることは不可能だった。
追いつきたいオランダはもちろん、追加点を狙うポルトガルも。
イエローカードが出されても、もはや悔しそうな顔すらしない。
今にして思えば、あのロナウドに対するブラルーズのキックに
レッドを出すべきだったか。あれは悪質そのものの危険なキックだった。
あれをイエローで済ませたせいで、一気にファウルのラインが
破壊されてしまった感がある。
そして、レフェリーボールから、非紳士的に攻撃を開始してしまった
ハイティンガの行為も責められてしかるべきものだ。
この大荒れの試合を呼んだのは、結局はオランダ側だったように見える。
そして、それを制御できなかった審判も問題ありである。
ただし、とびっきりのエキサイティングがあったことは認めざるを得ない。
あんなに緊張と興奮が混ざった試合もなかなかないのだ。
最後は圧倒的に攻め込むオランダ。
ポルトガルは死力を振り絞り、耐え抜いた。
これでオランダはW杯から姿を消した。
伝統のサイドアタックは結局披露されずじまい。
卓越した個人技が時折目立つ程度にとどまった。
たとえこの試合を獲ったとしても、優勝はなかっただろう。
あれがファン・バステンの目指すチームの完成系だというなら
彼は監督から退くべきだ。だが、そうではない。
ファン・デル・ファールトがトップフォームにならなかったのは
大きな誤算だろうし、気の毒ではあるが、それだけではない。
まだこのチームは若すぎたのだ。完成期はもう少し後にやってくるのだ。
ファン・バステン監督自身が認めるように、このチームの成熟期は
2008年のユーロと2010年のW杯である。
今大会を勝ち抜くには彼らは若すぎた。経験が少なすぎた。
だからと言って、2年後、4年後の活躍が保障されているわけでもない。
その時にはコクーやファン・デル・サールといった頼れるベテランはいないのだ。
そう、この試合のフィーゴのような頼もしい兄貴分が。
2年後も4年後もオランダを応援して、ガッカリするはめになるのか。
今までのように。
そうならないことを祈り、これからのオレンジ軍団を見守ろうと思う。
そして、W杯はまだ終わらない。
日本とオランダが消えて、どこか胸にポッカリ穴が開いた気分だが、
まだまだ大会は続いていく。
今日も楽しみだ。

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