ホイッスルと共にいっせいに倒れこんだ選手たちを見て思った。
死闘だと。
CL準決勝、FCバルセロナ×インテルミラノの2ndレグ。
ちょっと異様な状況と空気の中で行われた一戦は、まさに死闘だった。
安っぽい表現で申し訳ないが、あれは死闘と呼ぶほかない。
前半のうちに10人になってしまったインテルがとった作戦は「守備」。
モウリーニョ曰く「100%攻撃は不可能」となった彼らは、とにかく守った。
ただ、全員がペナルティエリアに入って体当たりで跳ね返すような
タフな守備ではなく、ラインを保ち、ボールマンとキープレイヤーへは
しつこいまでのチェックを繰り返す、神経をすり減らすような守備。
ひとつでもミスを犯せば、世界最強のパスワークに一気に崩される。
動き方を間違えたら即アウツという、ギリギリの神経戦を
インテルは選択した。
そして、バルセロナは最後まで崩しに行った。
放り込んでのパワープレイには行かない。ハイボールを使っての高さ勝負、
あるいはコボレ球が引き起こす二次災害を狙ってのハイクロスには走らない。
コーナーキックを得てもショートコーナーを選択した。
あくまでも崩しに行く。
両サイドバックがウィングのようにサイドに張り付き、メッシとシャビが
ボールを保持しながら一瞬の隙を絶えず窺う。
特にメッシが細かいステップを刻んで、自分のすぐ目の前にいる選手との
距離を微妙に保ちながら、ペナルティエリア内をジリジリと狙うシーンは、
文字通りの“真剣勝負”。
どちらかが先に動いたら、切りつけられるような行き詰る近距離戦。
メッシがボールを持ち、インテルディフェンスと対峙する姿は、
さながら真剣を持った2人が向かい合うような緊張感だった。
わしはもう「なんだこれ?」という気分だった。
わしが言っても、たいした重みはないだろうが、あんな試合は
ちょっと見たことがない。
本当に異様な光景だった。
攻める側が絶えず攻める。跳ね返されてもマイボール。
失敗から次の瞬間、新たな攻撃がスタートする。
守る側は、跳ね返したら再び陣形を整えて迎え撃つ。
一度命をつないでも、直後に再び雪崩攻撃がやってくる。
こんなサッカーがあるのか、と。
新しい次元の別競技を見ているような錯覚を覚えた。
見たことのないスポーツがそこで繰り広げられているような…。
特に後半、何度も何度も続く神経戦を見ながら、何度も心の中で
「すげえ…」とつぶやいていた。
男たちが、集中を途切れさせたら命を奪われるような空気の中で
ずーっと戦っていたのだ。
完全に勝手な想像だが、あれは試合後に思いっきり嘔吐した選手が
何人もいるんじゃないだろうか。あんなプレッシャー、普通に考えて
常人には耐えられない。
※と言っても、あのピッチに常人などいなかっただろうが…
そして、勝利は守った側に。
正しくは敗れたのだが、その完封負けが、完全勝利を表すという奇妙な光景。
負けた側がコブシを突き上げ、体を躍らせ、ピッチで最大の喜びを表現する。
モウリーニョは抑えきれない興奮を爆発させていた。
両手の人差し指でサポーターを何度も指差す勝利のポーズは痺れた。
彼は史上最大ともいえる勝負に勝ったのだ。
監督冥利に尽きるであろう、歴史に残る最高最大の作戦勝ち。
初戦を2点差で獲り、勝負の第二戦を守りきる。
ああいうのを「ミッションコンプリート」というのだろう。
モウリーニョが王者・バルセロナという牙城を崩した瞬間だった。
しかし本当に、モウリーニョとバルセロナの勝負は面白い。
あの04−05シーズンのCLの伝説の一戦から、彼らがぶつかるカードに
外れナシである。
そして、とにかくCLは凄い。
サッカーが世界一の人気競技であり続けるのはなぜか。
それは、CLが教えてくれる。
一方、NBAはこれからクライマックスを迎えようとしている。
わしが世界一愛している球技・バスケットボールにも、この日のCLのような
恐ろしいまでの神経戦を披露してもらいたいと祈っている次第だ。
ああっと、最後にもう一度。
本当にとんでもない戦いだった。
死闘だった。
笛の音と共に、力尽きるように倒れこむ男たちを見ながら、
カッコいいと思わずにいられなかった。
本物の勝負にはやっぱり感動がある。

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至高の神経戦!バルサ×インテル へのコメント一覧
ゾクッとなった。
痺れちゃいました(。☆◇☆。)
サッカーの記事なのにゴメンナサイ(^-^;
迫力が伝わってきました★
試合後に「人生最高の敗戦」と語るモウリーニョにはシビれました!!
過去に通訳としてベンチにいた者と当時のキャプテンが監督となって戦ったというのも面白くなった理由ですかね?
お久コメです!!
いやー
あれを生で見た人は失禁ですね!!
それにしても
ルッシオ然り.サムエル然り.J・セザールはホントにヤバかったっすね!!
特にルッシオにいたってはいくら不調とささやかれているイブラヒモヴィッチを2試合とも完封ってかなんにもさせなかったのは痺れましたね!!!!
ホントにインテルは強かった!!
あの日のインテルの守備にはもっとリスクを冒して攻めなければならないと思いました
観ててそうなら、やってる側はどんだけなんだと…
バルサ大好きなんですけど、今回は素直にインテルに感服しました!
観ててそうなら、やってる側はどんだけなんだという気持ちが強かったです…
もともとバルサ大好きで、応援してたんですけど、今回に関してはインテルに感服しました!
ワールド杯に期待です!
自分のカラーを出しつつ、凄く人を引き付けるし…
やっぱり、人気ブログの作者は普通に小説とか書いても良いもの書くんだろうね。
そう考えると、やっぱりホーム&アフェイというルールは素晴らしい
もう少しでW杯ですね!!
今回も恒例の予想大会やりますよね???
すげェ楽しみにしてるんでぜひぜひお願いします!!!
もうなんか情けないですよ
JリーグもJ1増やしすぎて、レベルが全体的に下がった気がします。
あの野球ですら12球団なんですけどね。
日本代表が強くなるにはJリーグが常にピリピリした試合じゃないといけないと思うのです。
バリバリの緊張感、神経戦、心理戦という無形の部分がスポーツの醍醐味。心を動かされる部分です。
ユーロ2000のイタリア対オランダを観て【脚がつり、吐き気を催しても闘いをやめない伊達男達のカルチョ】を思い出しました。
Kさん、あの時はトルドがPKをたくさん止めちゃってすいま千円(´・ω・`)
涙でてきたりするし!!
それを実際ピッチやコートにいる選手はどんな気分なんですかね〜凡人には想像できません!!
それとも共存すべきか…
こうなったら代表でW杯優勝だ!!
両チームともに絶対負けられない局面の勝負に感動しました☆特にエトーがメッシとペドロに対して本気でディフェンスしたシーンがすごく良かった!!
08-09準決勝チェルシー戦は運もあって勝利したと思いますが、マンUとの決勝のボール回しとか今バルサは強すぎると思いません?
後半のインテルの守備は絶対点が入らないようなまさにカテナチオだったと思います☆それでも一点とったバルサはやはりすごい☆☆☆ただオッサン4バック(マイコン、ルシオ、サムエル、サネッティ)+J.セザールすばらしかったですね。
ミランvsアーセナルのラウンド16、ファーストレグをチェックしてみてください
僕が見た中で過去最高におもしろかった0-0の試合です
中身の濃さ、正直この試合に負けてませんよ
ゴールが決まらないこんなおもしろかった試合があるなんて、とサッカー観戦の常識を覆されました
たしか3シーズン前?の
ミランVSマンUでカカがキレキレで無双だった試合が一番印象に残ってる!
あの時のカカはまさしく世界最高のドリブラー、フィニッシャーだと思った(;´д`)
このまま優勝を勝ち取って欲しいですね。
個人的に…イブラが凄く残念です。
来年にはどこにいくんでしょうか。
あの試合がアンチフットボールと呼ばれたのに対し、今回のインテルが美しい敗戦とされたのは単にホームゲームの順番?それとも監督の差?サッカー界に打倒バルサの図式が出来てたから?
いずれにせよ今回はモウリーニョの素晴らしい「作品」を見させてもらいましたね。監督と言うだけある
けど、そこまで感情移入できるゲーム展開を作ったこの2チームはマジですごいと思った