「うーーっす、お疲れーーーーーー」
湘北高校体育館。
選抜本戦前、最後の練習が終わった。
キュッ、キュッ、
1年生たちがモップをかけ始める。
天崎 「こんな時間にモップがけなんて久しぶりだな」
荒石 「チッ、俺たちゃ小学生かよ。帰宅時間が早すぎるぜ」
普段は練習後に個々の自主練習が始まるが、今日はその光景はない。
明後日から大会が始まるということもあり、
安西から自主練習禁止の指示が出ていたためである。
宮城 「ふぅう〜」
大きく伸びをし、体育館を眺める。
「今日で最後か、この体育館でのバスケ部員としての練習は」
桜木 「ぬ?」 (最後?)
宮城 「ああ、今度こそ最後だ」
桜木 「いつもの、負けたら終わりっていうハナシか」
宮城 「いや、違う」
桜木 「?」
宮城、ニコリ。
「今度は違うんだ。選抜は高校生の最後の大会だからな。負けはもちろん、
全部勝って優勝したとしても終わりだ。俺たちは引退するんだ」
「お疲れっすーーーー」
「お疲れっしたーーーーー」
ゾロゾロと部員が体育館を後にする。
――高校生の最後の大会
桜木 「そ、そうか……」
宮城 「どうした? 急に寂しくなったか?」
桜木 「な、なにを…!!」
宮城 「ハッハッハ、心配すんなよ。引退しても練習には顔出すからよ」
桜木 「こ、来なくていい…!! 大会後は俺がキャプテンになって…」
宮城 「ありがとよ、花道」
桜木 「…!?」
宮城、ボールを拾う。
「何度ももう終わりだと思ったよ。自分が戦わずして高校バスケのキャリアが
終わっちまうってよ…。だが、お前らはやってくれた。俺たちは残った」
体育館に残るバスケ部員は宮城と桜木の2人のみとなった。
ダム、ダム……
ボールが跳ねる感触を確かめるように、宮城が静かにボールをつく。
桜木 「最後の挑戦か」
宮城 「ああ、本当に最後の挑戦だ」
ダム、ダム……
「リョータ! 桜木花道! もう戸締りするわよ!」
宮城 「おっと」
彩子の声だ。
玄関の外から宮城を呼んでいる。
「今日はさっさと帰って体を休めるの。安西先生に言われたでしょ!」
そして、晴子も。
「あと、明日も来ちゃダメですよー! 1日ゆっくり休んでくださいよー」
宮城、軽く手を挙げる。
「ゴメン、アヤちゃん。あとちょっと」
彩子 「ふぅ…」 (アンタは最後まで言うこと聞かないのね…)
晴子 「………。」
ダム、ダム……
宮城 「花道、絶対に勝つぞ」
桜木 「……。」
宮城 「どうした、ボーっとして。元気ねえな」
桜木 「いや…」
宮城 「屋良城、名朋、山王、全部倒して日本一だぜ」
桜木 「ああ、もちろんだ」
宮城 「お前にかかってんだからな、日本一は」
桜木 「…!?」
宮城 「ダンナがよく言ってただろ。リバウンドを制す者は…」
桜木 「ゲームを、制す」
宮城 「そうだ。お前がゴール下を制するんだよ」
桜木 「……。」
宮城、ドリブルをやめ、ボールを手に取る。
「カマラ、森重、河田美紀男、俺たちの相手はどのチームにも
強力なビッグマンがいる。それを全部お前が倒すんだ」
桜木 「……。」
宮城 「そうすれば、俺たちは勝てる」
再び彩子の声。
「リョータ!! 桜木花道!! 早く!!」
宮城 「っと、もうアヤちゃんがお怒りだ。そろそろ撤収だな」
桜木 「リョーチン」
宮城 「ん?」
桜木 「最後の大会、負けて引退にはさせねえぜ」
宮城、ニヤリ。
「ああ、頼むぜ、リバウンド王」
桜木 「俺と…」
宮城 「?」
桜木 「俺とルカワが負けさせねえ、湘北を」
宮城 「……!?」
一瞬、静寂。
そして、
宮城、ニコリ。
「ああ、頼りにしてるぜ、最強フォワードコンビ」
桜木、ニコリ。
「任せな、天才だからよ」
宮城 (ああ、ふたりともな)
「さて…」
宮城、ボールを構える。
「最後の運試しだ。入れば優勝」
ビッ!
スリーポイントラインのやや内側からボールを放る。
ボールが美しい放物線を描く。
桜木 「……。」
体育館の外から、彩子と晴子もそのボールを見つめる。
「……。」
ガン!!!!
宮城 「あ」
彩子・晴子 「…!?」
桜木 「バカリョーーーーチン!!!!」
次の瞬間、ゴールに向かって跳んでいた。
宮城 「……!!」
ガシイッ!!
外れたボールを空中で掴む。
桜木 「ダンコ…」
ドガアアアアアアーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
桜木 「全国制覇!!!!!!!!!!」
渾身の力でボールをリングに叩き込んだ。
宮城 「おお…」
桜木 「優勝は逃さないぜ」
宮城 「ハハッ」
1分後、
バシイイ!!!!
バシイイ!!!!
ハリセン二発。
体育館の玄関。
宮城、桜木、頭を押さえている。
彩子 「まったくアンタたちは、ホントに言うこと聞かないんだから」
宮城 「スミマセン……」
ガチャッ
彩子が体育館のカギをかける。
「さてと…」
宮城 「あ…」
体育館の外には、安田、潮崎、角田の3人。
「お疲れ」
宮城 「お前ら…」
彩子 「みんな」
湘北高校3年生、勢ぞろい。
潮崎 「終わったね、最後の練習が」
宮城 「ああ…」
角田 「今日は、3年生5人でメシでも食って帰ろうか」
彩子 「え?」
安田、ニコリ。
「マネージャーへの感謝の気持ちも込めて、さ」
彩子 「……!!!」
桜木 (ほう?)
晴子 (先輩…)
彩子 「い、いいわよ…!! 感謝なんて…!!」
宮城 「さ、行こ行こ」
彩子 「いいってば…!! ホントに!!」
男たちがドン、ドン、と彩子の背中を押す。
校門へと進んでいく5人。
背中を眺める桜木と晴子。
声が聴こえる。
「あれ? マネージャー泣いてる?」
「泣いてないわよ…!!!」
「3年間ありがとうな、マネージャー」
「そ、そういうこと言わないの……!!」
桜木 「……。」
晴子 「グスッ」
桜木 「……!!!?」 (ハルコさん…!!?)
そ〜〜〜っと、肩に手を置こうとする。
晴子 「最後の大会なのね。頑張らなきゃ」
涙をぬぐい、両コブシをグッと握る。
桜木 「はうっ…!!」
慌てて手を引っ込める。
晴子 「絶対に勝とうね、桜木君!」
桜木 「ハ、ハイ…!! もちろんです!!」
晴子 「帰ろっか」
桜木 「え…!!?」
晴子 「先輩たち行っちゃったし、一緒に帰ろ」
桜木 「………!!!!!!!」
ギク、シャク、
ギク、シャク
固まって歩く桜木。
晴子 「?」
桜木 (ハルコさんと一緒に……)
「今日は星がキレイね」
晴子、空を見上げる。
(お兄ちゃん、みんなでまた全国制覇に挑戦だよ)
桜木 「………。」
(空を見る顔も美しい…!!!)
続く
スラムダンクの続きを勝手に考えてみる(723) へのコメント一覧
冬の選抜楽しみにしてます!( ^ω^ )
陵南や海南の想いを背に湘北には思いっきりプレイして欲しいです!
がんばれ湘北!!
最近は昔のように土日更新ですね!
ありがとうございます!
リョーちんたち3年生が遂に湘北高校での最後を迎えたのですね…。
やっぱり寂しいですね…。
でも、日本一で引退を迎えてくれるはずだと思えました!!
花道から「流川と」という言葉が出たので、湘北は大丈夫だと思ってます(>_<)
頑張れ湘北ー!!
花道は本当に泣かせてくれるなぁ(T_T)
国体後の公園のシーンもそうですが、Kさんはこういう描写が本当に上手いですね。
花道と流川の不器用な信頼関係、最高です!!
花道確か…、晴子ちゃんと登下校できたら、もう死んでもいいって言ってたような…。
良かったね、おめでとうございます♪
ゲームメイク宮城リョータ、楽しみです!!
果たして花道は外人に勝てるのかどうか!!楽しみです(^-^)ノ
以外と会場に那須とか将来のメンバーが見に来ていても面白いかもですね\(^^)/
これからも楽しみにしてますが、まずは御身体に気を付けてください(^_^)ノ
いつもありがとうございます(●'w'●)
素敵やん!
最近更新多くて嬉しいっす!!!
花道に少し教養があれば勘違いしちゃいそうですね^_^
りょーちんの
さすがシュートを外した後
花道が押し込み勝つのか
それとも時間切れで負けてしまうのか
何かと布石を感じました!
今週もたろしゅ!面白かったです
ありがとうございます(^^)
ですが、こんなに更新してもらえるのは有難いのですがその分体調の心配もしてしまいますw
胸が熱くなりました。
3年生が素敵で、と思ったら最後は笑えて。
「天才だからよ」で一瞬最終回なのかとドキリとしてしまいました(笑)
桜木の夢の好きな子と登下校がこんなとこでかなうとは。良かったね〜♪
なんだか大人になっちゃって....
良かったね、花道!
好きな子と
登下校の夢叶って!!
最近は荒石、天崎が漫画にいたと思ってます。自分の中でキャラが出来上がってます。文章はこーいった想像の楽しみが魅力ですよね。
にやにやしてしまった……。
花道軍団はついていくのかな。
いつもありがとうございます!
競技こそ違えど私自身、プレイヤーであり、指導者でありこのブログでは両方の目線で楽しませて頂いてます!
これからも応援しています!
いよいよですね。湘北の活躍楽しみにしてます。
後、つまらぬことですが、自主練習禁止で帰りが小学生並みに早いのに、星空とは・・・?。小学生並みは例えというか、そんな感じなのかな?。まあ、冬は日が短いですけど。
こう言うほっこり回は、これはこれで(*´ω`*)♪
そして、また一歩花道と流川が近づいた!
晴子ちゃんとは……w
流川から桜木のアリウープがみたいです!
今回の話とは全く関係ないけど牧と桜木が同じチームでプレイが実現してほしいなー
青春ってこういうことなんだなって思いました(;_;)
いよいよ冬の選抜ですね、楽しみにしてます!!
揚げ足はやめましょう。そこは、論点にならないです。
湘北の縁の下の力持ちはアヤコさんだったりしますよね。いなくなるのは寂しいですね。高校卒業後はどこの大学へ進むのかしら。
面白かったです。
確か今回の大会は優勝出来ないんですよね?
どこまで勝ち進むか楽しみです!
カマラに勝って重森と…ん〜って感じですかね。
あのシーン、ぐっときました。
まだ試合も始まってないうちから涙しました。。。
私も頑張らなな!!断固っ!!!
仰るとおり、「今は冬」を印象づけるための描写かと。
宮城の代が全国制覇しなかったという記述はないわけで、神奈川を制したメンバーなら十分優勝可能性あるんじゃないかと思います。
桜木が森重と一勝一敗となると今回負けて、三年夏で勝つってのが大方の予想にも思いますが、Kさんのことだから
我々一般人の予想を超えるストーリーを用意してるのかなあと思うと。。。
あぁ楽しみだあ。
でも宮城は県No.1になってますよねえ?
最後なに言ってんの?
宮城の代で全国制覇しなかったという記述はないけど、大学編の花道の描写で高3の夏に全国を制したとしか書いてない以上この花道2年の冬に優勝はないと思うけどね。
それに宮城は県予選1試合たりとも出場してないし、俺ならそれで他人からお前県No.1になったなとか言われても嫌味にしか聞こえん。
まぁ今更そんな何年も前の描写に則って矛盾が出るかどうかなんてどうでもいいわw
やたらとあげ足とる人いるけど、世の中出回ってる漫画ってほとんど後付とかで矛盾があるし、ましてKさんは編集者であれど作家でも漫画家でもないんだからそのくらい許してやれよw
花道の成長と新技がみたいです(^^)v
by水戸etc
って言葉がいい