突如思いだしたように、このコーナーを更新するわけですが、
スポーツ名勝負、その4です。
※過去記事はコチラから(3つしかないけど)
NBA、サッカー、ボクシングときましたので、
また違う競技で、今回は総合格闘技で行きましょうか。
名勝負その4
PRIDEヘビー級暫定王者決定戦
ミルコ・クロコップ × アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ
立ち技と寝業の頂上決戦なんて言われ、大変に盛り上がったこの試合ですが、
もともとはブーイングのなかで生まれたカードだったんですよね。
皆さん、覚えていますでしょうか。
もともとミルコが熱望していた対決は、王者・ヒョードルとの一騎打ちでした。
このK-1からやってきたストライカーは、PRIDEのリングで猛威を振るい、
「さあ、俺と闘え」と、ヒョードルにアピールし続けていたのです。
PRIDEデビュー戦の藤田にはじまり、
ボブチャンチン、ヒーリング、桜庭、シウバなどなど、
様々な強敵が現れるも、それらの対決を無敗でミルコは走り抜けます。
※シウバ戦はドロー(1回目ね。あれも燃えた!)、あとは全勝
「妖刀」と言われた左ハイキックでKOの山を築き上げ、
その存在はまさにPRIDEにとって“黒船”といえるものでした。
K-1とPRIDEって、当時の二大格闘興行で、お互いライバル的な存在でもあり
(共同イベントもあったから、敵対していたワケではないと思うけど)、
ファンの中でもなんというか「こっちのほうが上」みたいな論争があった時代でした。
K-1派のファンからすれば、ミルコがPRIDEでのし上がっていく様は
爽快だったかもしれませんが、古くからのPRIDEファンからすれば、
彼はやはりインベイダーだったんですよね。
K-1で頂点を獲っていないミルコがPRIDEを制すれば、
それはイコール、「K-1>PRIDE」の証明である、みたいなことを言う
ファンも当時はいました(2ちゃんの格闘板なんてこの話題が凄かったよ)。
※だから逆もしかりで、PRIDEを主戦場とするゲーリー・グッドリッジが
K-1で暴れてた時は、K派からゲーリーは敵視されていましたよね
(バンナ戦の盛り上がりは凄かったなあ)
とにかく、ミルコの勢いは凄くて、もう誰も彼を止められない。
憎らしいほどに強い。黒船、ホントに黒船です。
2ちゃんねるをはじめとした、各種ネット上の議論も、
「ミルヒョー(ミルコ×ヒョードル)早く〜」の大騒ぎであります。
観たいわけですよ、どっちが強いのか。
世間的には「ミルコを止めろ」という声がたくさんありましたが、
一方で、ヒョードルはヒョードルで、これまた「どうやったら勝てるの?」と
世界中が疑問符を抱く恐ろしい強さを見せていた頃でもあり、
もしかしたらミルコならば…、という期待があったことも事実。
まあ、とにかく観たいわけです。
で、
いよいよヒョードルへの挑戦に対し、文句ナシの状況を構築し、
その対決がついに実現しようかという、その時、
ヒョードルが怪我をしちゃうんですよね。
もう、ミルコ本人は当然ながら、ファンもみんなガッカリですよ。
荒れましたなあ、ネット上も。「ヒョードルが逃げた」と。
で、急きょ決まったのが、このカードだったんです。
ヒョードルが負傷離脱中なので、暫定王者決定戦を実施しようと。
ノゲイラとミルコで。
統括本部長の高田さんが、少々挑戦的な声で、世間に問いましたよね。
「確かにヒョードルとミルコの試合が流れてしまったのは残念ですが、
ところで皆さん、観たくないですか? 寝業と立ち技の世界一同士の対決」
いや、観たいに決まっとるわけですよ、そんなもん。
果たして迎えた決戦の日。
わしは会場におりましたが、その空気は完全に「ノゲイラ勝て!」でしたね。
わしもどっちかというと、ノゲイラ寄りでした。
ミルコはホントに凄いし、試合も豪快でグレートなファイターなんだけど、
とはいえ、ノゲイラまで負けてもらっちゃこまる、と、やっぱり思っていたんです。
まあ、緊張感が凄かったです、あのリング。
それはつまり、ミルコが怖いからですよね。
多くのファンがノゲイラの勝利を祈っていたのですが、
スーパーストライカーのミルコはホントに怖いんですよ。
一発もらったらノゲイラといえどもアウツだと。
我々はミルコが参ったするところは一度も見たことないし、
それどころか関節技を決められるシーンも見たことがない。
ディフェンスが盤石だったんですよね、ミルコ。
ものすごい特訓を積んでいたのでしょう。それはもう素晴らしい守備力。
ことごとくタックルを切り、ガードポジションでも相手に隙を与えず、
寝転んでも、攻撃をシャットアウトするんです。
で、「ブレイク」の声がかかれば、また立って戦うことになり、
ミルコ圧倒的有利の状態に戻るわけです。
そんな図式にノゲイラもハマってしまうのではないか。
で、わずか一瞬の隙に、あの妖刀を抜かれ、終わってしまうのではないか。
そんなドキドキ、そんなハラハラ、よって緊張感MAXですよ。
事実、1ラウンド、ノゲイラはミルコを捕まえることができません。
ミルコのディフェンスが完璧なのです。
また、ノゲイラはスタンドの打撃の技術もなかなかのものなのですが、
さすがに本職のミルコには敵いません。
やっぱり押されてしまいます。
1ラウンドの終盤には、クリーンヒットではないながらも
左ハイを浴びてしまい、ついにダウン。
あの時は会場から馬鹿でかい悲鳴が上がりましたよ。
「うわあああああーーーーーーーー!!!!! 喰らったああああ!!」と。
「ヤバい!!! ヤバアアアーーーーーーいいい!!!!」と。
直後にラウンド終了のゴングが鳴るのですが、
あれ、レフェリーストップによる敗北のゴングだと思った人も
たくさんいたのではないでしょうか。
インターバルの音楽が流れた瞬間
「ああああーーー、ビックリしたあああ」「負けたと思ったわ〜〜」
という声が、あちこちから上がりましたから。
ともあれミルコ優勢です。
ノゲイラは捕まえきれず、ミルコの打撃の精度は徐々に上がっている。
怖い、2ラウンド目が怖い。
が、
ここからがノゲイラの真骨頂。
どんなに劣勢に立たされても、決して心を折られることはなく、
諦めることなく、戦うノゲイラ。
何度も見せた逆転劇が、ここでも披露されます。
2ラウンド開始早々に、テイクダウン。
まさにミルコは一瞬の隙を突かれた格好。
ほぼ5分まるまる残っているところでのテイクダウンです。
※しかし、ミルコらしからぬダウンだったなあ、アレ。
ラウンド開始早々で、ちょっと集中が足りてなかったのかなあ。
これは千載一遇のチャンス。
解説の高田さんも
「これは大事に行きたい」「庭みたいなものですから、ノゲイラの」
と、もはや中立の解説という立場を忘れたかのように、ノゲイラにエール。
ゲストの小池栄子さんも、もはや「坂田よりノゲイラのほうが好きなんじゃ?」
と言われるくらいにノゲイラを全力応援。
そして、
ミルコがブリッジでノゲイラのマウントを跳ねのけようとしたその瞬間、
ノゲイラの腕十字が鮮やかに決まり……
「ストップ、ストップ、ストップ!!!!!!!」
島田レフェリーの大きな声が会場に響き渡ってジ・エンド。
もう、総立ちですよ、総立ち。
あの時の会場の興奮ったら、そりゃ凄かったですよ。
わしも立ち上がって吠えましたよ。
「うおおおおおーーーーーー!!!! ノゲイラーーーー!!!!!!」
高田本部長も大興奮。
「獲った!! 獲った!!! これは凄い!!!!」
坂田よりノゲイラを愛している、でお馴染みの小池さんは大号泣。
「のげいらあ!! ああああ!! うれしいーーーー!!」
K-1からやってきた黒船の快進撃がついに止まった瞬間でした。
ノゲイラは一躍ふたたびスーパーヒーローです。
圧倒的に応援されている中で、この逆転勝利ですから。
リング上で涙するミルコ。
これが、実はファンに新しい思いを芽生えさせた瞬間でもありました。
この戦いにどれだけ賭けていたのか、このPRIDEのリングへのリスペクト、
それらがミルコの涙から感じ取れたのです。
この日を境に、ミルコはPRIDEの敵ではなくなったように思います。
最終的にミルコは大人気ファイターになるのですが、
間違いなくこの試合が転機だったでしょう。
憎き黒船ストライカーが、PRIDEを代表する素晴らしいファイターに
姿を変えたのがこの日だったのです。
いやあ、熱い試合だったわ、あれ。
映像からもその熱、間違いなく感じ取れますよ。
ということで、名勝負その4、でした。
ではでは。

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嗚呼、名勝負(4) PRIDEヘビー級暫定王者決定戦 ミルコ×ノゲイラ へのコメント一覧
K-1が一回目、二回目が猪木ボンバイエです。
ちなみに、自分が格闘技会場で一番凄いと思った試合は秋山対三崎の試合です。