2016年7月、サンアントニオ・スパーズは
ひとりの偉大なプレイヤーの引退を発表しました。
ティモシー・セオドア・ダンカン ――
皆さんにお馴染みの呼び方は、ティム・ダンカン。
NBAの歴史に残る、211�僂離僖錙璽侫�ワードです。
ティム・ダンカン、
ホントにホントに素晴らしいプレイヤーでした。
史上最高のパワーフォワードとの呼び声があるのも頷けます。
バンクシュートとかリバウンドとかブロックとか、
インサイドプレイヤーに求められるあらゆるプレーを高次元でこなす、
その個の能力はもちろんながら、何より彼が素晴らしかったことは、
―― 入団以来、一度もチームが弱かったシーズンがなかったこと
これでしょう。
なんと、現役通算で自身が出場したゲームの勝率は、7割1分9厘。
いやはやとんでもない選手です。
スパーズは長らく、「ダンカンが出ればほぼ負けない」状態だった、
ということになります。
というか、ダンカンは欠場の少ない選手ですから
（大ベテランとなった晩年のシーズンも60試合・70試合以上出場しています）、
イコール、スパーズ自体がずっと負けないチームだったともいえますね。
昨今、多くの選手が優勝を求めて、あるいは希望のプレースタイルを求めて、
チームを転々とすることが珍しくないなか、このダンカンのキャリアは、
スパーズひと筋19年。
彼は、19年間スパーズを強豪の座から一度も落としませんでした。
彼は、紛れもなくスペシャルなフランチャイズ・プレイヤーです。
19年も在籍していれば、当然周囲の面子は変わります。
ロビンソンとのツインタワーに始まり、パーカー＆ジノビリとのビッグスリー、
レナードやグリーンら若手との融合に至るまで、メンバー構成が変わりゆく中、
ゴール下にはいつもダンカンがいて、チームを支え続けました。
スパーズは選手がコロコロ変わらないチームだったので、
長きにわたり軸がしっかりしていたということですが、
それはつまり、ずっとダンカンがいた、ということであります。
どんな選手と組んでも力を発揮し、どんな選手と組んでも力を引き出し、
どんな相手と戦っても力を発揮し、どんな相手と戦っても大崩れしない、
弱点らしい弱点のない、まさに完成されたプレイヤーだったといえるでしょう。
プロ入り前から注目されていたダンカン、
彼がスーパースターに仲間入りしたのは入団2年目、
1999年のNBAファイナルです。
ロックアウトによりシーズンが50試合と大幅短縮されたこの年、
ダンカンと、既にリーグ最強センターの1人だったデビッド・ロビンソンの
「ツインタワー」を擁するスパーズは、順調にファイナルまで進みます。
相手はニューヨーク・ニックス。
東の8位という崖っぷちシードでプレイオフに滑り込むと、
大黒柱のパトリック・ユーイングを怪我で欠きながらも
ファイナルに駆け上がり「ミラクル・ニックス」と呼ばれたチームです。
ラトレル・スプリーウェルとアラン・ヒューストンの
「ハイパー・シューティングガード・デュオ」（ダンクシュート誌命名）が
縦横無尽に駆け回り、全米を熱狂させたミラクル・ニックスですが、
まさに彼らの夢を打ち砕いたのが、地味ながら堅実なダンカンのインサイドでした。
特にバンクシュートの確率が異常でした。
ゴール下やミドルポストはもちろん、左右45度の決して簡単ではない
中距離からも、ダンカンは確実に居ぬき続けます。
ファイナル第1戦の、大事な最初の攻撃も彼のバンクシュートでした。
211cmの体でゴール下の強さに長けたダンカンの
右45度のミドルシュートで、この年のファイナルは幕を開けたのです。
―― このビッグマンは外に居ても点を獲ってくる
テレビ中継解説の塚本さんは「これが厄介なんですよねえ」と言いました。
ニックスにとって、まさに厄介極まりない一発でゲームが始まり、
結局、優勝が決まった第5戦まで、彼らはダンカンを止められませんでした。
そして、ダンカン＆ロビンソンから点を獲ることができませんでした。
そう、ダンカンは守備力も圧倒的だったんですね。
このファイナルも5戦平均14.0リバウンドを記録しています。
すぐ横にまだまだ元気な33歳のロビンソンがいながら、です。
NBAの長い歴史の中でもそのディフェンスは際立っていて、
リバウンド数は史上6位、ブロック数は史上5位、
歴史に残るゴール下の番人でもあったといえるでしょう。
そういえば、このファイナル第5戦のラストシーン、
逆転の望みをかけてゴール下に侵入したスプリーウェルの前に現れたのも
ダンカンとロビンソンのブロックショットでした。
当然ながら攻守の軸となったダンカンが、このファイナルでMVP受賞。
デビッド・ロビンソンから、新たにチームの主役の座を引き継ぐ
スーパースターが誕生した瞬間だったといえるでしょう。
そこから、ダンカンは引退までに通算5度のNBA制覇を達成します。
そのうち3度は自分がファイナルMVPを獲得しています。
攻撃の中心の座を、パーカーやジノビリに譲った後も、
依然インサイドの核としてダンカンは君臨し続けました。
彼のカラーとスパーズのカラーはとてもよく似ており、
ジノビリのような変幻自在のサーカスプレイヤーや、
パーカーのようなスピーディなPGがいながらも、
スパーズはずっと堅実であり続けたのです。
敵からすれば、もっとも憎らしいチームだったかもしれません。
ここしばらくのスパーズは、ダンカンという存在を
そのままチームの形に変えたような、そんなイメージの球団で、
とにかくミスをしない、そして相手のミスを見逃さない、
一見地味だが、だからといって凄いことが出来ないわけでもなく、
とんでもないパスや華麗な個人プレーもドンドン飛び出し、
獲るときは一気に畳み掛けて10-0のランなどを見せる、
圧倒的な負けにくさを持ち、勝ち方も知り尽くした軍団でした。
彼らの黄金パターン、いまでもすぐにイメージできます。
ゴール下のダンカンへパスが入る、
ディフェンスはダンカンにダブルチーム、
ダンカンは冷静かつ正確に、
外へ（主にトップの位置へ）ボールを捌く、
受け取った選手にディフェンスチェックが入る、
トップからウィングにパスが展開される、
そこにもディフェンスチェックが入る、
ウィングからコーナーへパス、
ノーマーク。
ここがノーマークになるんですよね。
最初のダンカンのところでダブルチームを仕掛けているので、
どうしてもディフェンスの枚数は後手に回るんです。
ダンカンの的確なパスアウトから、2度ボールを展開すると、
だいたいその選手はフリーになっているんです。
ダンカンにボールが入った後、
最終的にコーナーからスリーポイントが決まるという形は
スパーズの十八番ともいえるパターンでした。
最後のシュートが落ちないのも、やはりダンカンカラーのチーム、
チーム全体でまさに堅実。
じゃあ、ダブルチームはダメだ、と1対1でダンカンにつくと、
オーソドックスなターンからバンクショットを決められる。
手の打ちようがない、と。
と、これでもかと褒めちぎりましたが、なんとも弱点がなかっただけに、
彼の感想はこうなってしまいます。全部、凄いんですよ、要するに。
こんなに地味で凄い選手は二度と現れないかもしれませんね。
19年も同じチームに居て、且つ、すべてのシーズンでそのチームが強者だった、
なんていう選手も同様に、二度と現れないかもしれません。
ティム・ダンカン、
NBAの歴史に残る、最強のパワーフォワードです。
※2016/11/22、新たに「嗚呼、名選手」のカテゴリを作り、
この記事のタイトルを変更し第一弾としました
↓ うーん、攻守両面で穴がない！！
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jungle123
嗚呼、NBA名選手／ティム・ダンカン へのコメント一覧
個人的にはガーネットにもコメントして欲しいです。
99年はちょうど私事ですがインディアナに留学しておりスパーズ、ペイサーズ、ニックスはよく見ていました！
懐かしくやっぱり最高の選手でしたね。
理由は…
今思えばKさんが言うように穴がないからだったのかなぁ(笑)
とにかくスパーズはシーズンにしてもプレイオフにしても全てシナリオ通りに進めてるんじゃないかって思うくらい手堅くて…
でもそれは理想的というかほんとは憧れてたのかなぁ、スパーズみたいなチームに。
今はとにかくNBAの一時代を支え続けたダンカンにありがとうとお疲れ様でしたと言いたいですね。
スパーズと言えば誰？って聞かれたらやっぱりダンカンってなりますね
たぶん何十年後でもそう言うと思います
ジノビリ･パーカーも高齢なので、レナードにはスパーズ一筋で頑張ってほしいところです！
素晴らしい選手。
て事で、コービー、ガーネット、アレンの総評お願い致します笑