編集者・Kこと、
指導者・Kです。
子供たちにミニバスを教えるのが、
生き甲斐になりつつある40歳です。
当ブログでもお伝えしましたが、
先日、ミニバスの合宿に行ってきました。
暑くて熱い、当クラブの夏の風物詩です。
その夏合宿のなかで、ちょっとしたエピソードが
あったので今日はそのお話を。
この合宿、一部では「地獄」とも呼ばれる
過酷な3日間だったりします。
ホントに激しい練習で、とにかく辛いんです。
技術、体力と共に、精神力を鍛えていきます。
実際、この3日をクリアすると子供の顔が変わります
(いや、ホントに)。
特に今年は、ご存知の通りこの猛暑。
例年の倍以上の給水・休憩タイムを取り、
健康管理にしっかり気を配って進めていきますが、
それでもやっぱり脱落者は出てきます。
※「倒れるまでやれコラ」なんていう
ブラック企業じゃありませんので、ウチ。
脱落者は休ませます
そのとき、おおよそみんな泣きますね。
それは練習の辛さもあるでしょうが、
それ以上に脱落した自分が悔しくて。
まだ続けている他の子がまぶしくて。
という、当クラブの合宿ですが、
ひとつ、名物メニューがあります。
ちょっと特別な1対1の練習で、
限界ギリギリまで続く鬼のメニュー。
※便宜上、ここでは「鬼の1対1」と呼びます
おそらくは、この合宿が「地獄」と呼ばれる
最大の理由がこの練習なのでしょう。
その練習のボリュームもさることながら、
子供も指導者も物凄い大声で吠えているので、
迫力もまた異常。
初めて見る保護者はたいてい呆然とします。
そして、感動もします。
子供たちのあまりの頑張りっぷりを見て。
鬼の1対1の最中は、
毎年必ず泣き出す子が現れます。
ひとりやふたりではなく、大量に。
二日目以降は、「次、鬼の1対1」と
監督が言っただけでもう泣く子も。
そういうメニューなんです。
この鬼の1対1、
もちろん初参加の下級生は知りません。
メニュー名を告げられ、
青ざめる上級生の横で、
下級生たちは「次は何?」と普通に待機。
数分後、
目の前で繰り広げられる1対1を見て、
そして、すこしだけ混ざって、
やっぱり泣きます。
それは多分、しんどさと同時に、
その迫力に負けて。
※とにかく異常な迫力なんです。
泣きながら大声を出す子供たちと、
一緒に吠える指導者の、その姿が。
下級生は、
初日は見るだけ。
二日目はちょろっと参加。
でもちょろっとでも大号泣。
迎えた三日目。
上級生とは別メニューで、わりと緩やかな
時間を過ごしている下級生。
みんな笑顔で練習しています。
ヘロヘロの上級生とは正反対。
いよいよ練習もクライマックスという、そのとき
監督がわしに告げました。
「Kさん、下級生でもやりたいという子がいたら
鬼の1対1に参加させてみましょうか」
わしは下級生をメインに指導するコーチです。
こういうときはわしの出番です。
わし 「よーーっし、集合!!」
笑顔でダムダムやっている子供たちを集めます。
そして告げます。
「いまから鬼の1対1やるぞ。
一緒にやりたい奴はいるか」
数名の手が挙がりました。
わしは続けて告げます。
「でも、昨日までとは違うぞ。今日は上級生と
同じようにお前らもやるんだ。それでもやるか」
全員の手が下がりました。
当然です。
初日とは違います。
もう分かっているのですから。
目の前のコートに立ったらどうなるのか。
痛いと分かったあとに注射を受けるようなもの。
そりゃ怖いに決まっています。
が、数秒後、
ひとりの子が手を挙げました。
わし 「やるか」
子供 「やります」
わし 「よーーっし、よく言った!!」
すると、
ふたり、三人と手が挙がります。
ひとりの勇者が開けた扉に、
僕も私も、と続く戦士たち。
が、残り10数名はやはり手が挙がりません。
それだけの怖さがあるんです、
鬼の1対1には。
ひとり、
迷っている子がいました。
目を瞑り、歯を食いしばり、考えています。
本気で迷いに迷っているのでしょう。
おそらくは、
怖いけど、ホントは参加したいのです。
勇気を出してあのコートに飛び込むことを決めた
数名に嫉妬もしているのです。
負けたくないのです。
なのに手が挙がらない自分が悔しいのです。
でも、やっぱり怖いのです。
手が挙がらないのです。
その子は、先日行われたフレッシュ大会
(4年生以下の大会)でキャプテンを務めた子です。
いつも明るく元気いっぱい、
一番声が大きく、笑顔の絶えない子です。
が、いまこの瞬間、あの明るさはありません。
迷っています。
もういまにも涙がこぼれそうです。
手を挙げられないことが本当に悔しいのでしょう。
でも時間はありません。
わし 「この4人で決定か。あとは見学でいいな」
扉が締まろうとしています。
そのとき、
最初に手を挙げた子が言いました。
「やろうよ」
その最初に手を挙げた子、
実は、迷っている子の親友。
その親友は、こう続けました。
「怖いけど、やらなかったら
絶対後悔するよ」
数秒が経過。
ついに口を開きました。
「やります」
挙げた手は震えています。
目を瞑ったまま、上を向いています。
もう限界ギリギリの顔です。
わし 「やるんだな」
子供 「やります…!!」
覚悟を決めた男の尻を
バチンと叩いてやりました。
「よっしゃああ!! 行ってこい!!!」
そして合宿が終わり、、、
子供たちは過酷な3日間をクリアした
達成感でこの上なくさわやかな表情。
体育館からバスへの足取りは軽やかです
(いや、フラフラなんだけど)。
テクテクと歩きながら、
わしは、件の4年生に聞きました。
「どうだ、やってよかったか」
子供 「はい!!!」
いつものあの笑顔でした。
かわいい笑顔ですが、
でも、男の顔になっていました。
わし 「そうか、じゃあ明日もやるか」
子供 「いや、いいです」
わし 「カッカッカ」
わしは思うのです。
あの迷いに迷った数十秒、
あの僅かな時間で、この子は成長した、と。
ヘタしたら、人生を変える数十秒だった
可能性すらあると。
この子は逃げなかったのです。
あのとき、手を挙げたのです。
まだ小学4年生、10歳の子供です。
これから何十年も彼は生きていく。
その何十年のなかで、
何度もこういった場面はやってくるでしょう。
この子は逃げないと思います。
そういう大人になると思います。
こんな瞬間を見ることができるのも
また指導者の醍醐味なんですね。
10歳の少年の決意と覚悟、
そんなハナシでした。
ではでは。

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ミニバス夏合宿、10歳の覚悟のハナシ へのコメント一覧
スラムダンクの続きを〜はもちろん、息子さんのミニバス物語もいつも楽しく読んでいました。それもあって最近のコーチ物語もニヤニヤしながら読んでます(´∀`)
いやぁ素晴らしい。これからもずっとずっと楽しく読ませてもらいます!
その二人が、将来Bリーグで活躍するようになったりしたら、このエピソードはお宝ですね……!
もちろん、そうじゃなくても、二人にとってはかけがえのない瞬間になったことでしょう。
合宿お疲れさまでした!
素直にめっちゃ感動したので、
どしてもコメント残したくなりました。
kさん書いてる事って、親から見ると
物凄いことですよね。
そんな場面に出会るのってホントに
羨ましいです。
その瞬間、紛れもなく成長しましたね。泥臭く、確実に輝きましたね。
子どもを目の前にして、その子の怖さや悔しさ、意欲…いろんな葛藤を推し量ることは、無意識でもできるときもあれば、意識的に考えても答えが分からないときもあるように感じます。
Kさんも幸せそうですが、その子はもっと幸せでしょうね。
明日も頑張らなきゃ、というより、
明日も頑張れる気がします。
実際は「鬼の1対1」みたいな練習ではないですが、ミニバスケを通じて息子も成長したと親バカながら感じています。
深イイ話、ありがとうございました!
泣きそうです。
明日からまた、頑張ります。
けど、仲間がいれば頑張れる!
そんな話しですね。
日頃子どもたちの近くにいることが多く子どもの可能性は無限だなと感じます。
是非、仲間を大切にしてほしい。そして、スポーツをして学んだことを一生の宝物にしてほしいです。
Kさんコーチ業頑張ってください!
子供にとって貴重な時間、決断は
子供が大きく成長する瞬間に繋がりますよね。
上手くなることももちろん大切ですが、
上手くなるための過程や決断が選手として
人間として大きな成長を遂げるのだなと
感じます!素敵な話ありがとうございます。
子供にとって指導者ってある意味絶対。その絶対神が言うことが当たり前である意味催眠状態になってるだけ。
私自身子供のころ少年野球で同じようなに熱い指導者の言うことに従ってました。でも大人になってから気づいたのはそういう指導者は自己陶酔してるだけだったんだなと。結局大人になって何一つ得るものはなかった。親もその催眠にかかってるだけだった。我が家は指導者の言うことは絶対じゃない、指導者や大人が絶対正しいとは限らない。自分達親が言ってることも正しいとは限らない。ってことを徹底して教えてます。何が正しいか自分で判断できるように手助けをするだけにしてます。
バスケの本場アメリカでこんな指導してますか?生まれつきのフィジカルの差はあれどもっと賢い指導してますよ。
我が息子にもソフトボールでそういう日が来るといいなぁと少し羨ましくもあります
会話ありますか?
この年代の子どもたちは、大人の想像よりはるか高い成長曲線見せてくれますよね。
あなたがいた野球チームはよっぽど酷かったんでしょうね。
ちなみにアメリカの練習は日本よりキツイですよ。
10歳だけど。
私、小学校で教師をしています。
子供の輝く顔が大好きで、教師人生13年目になりました。
小学校では泣くまで指導することはありませんが、道徳の時間に心が動き涙を流す子や、運動会で勝って負けて涙を流す6年生。
どうして子どもの顔って、輝きがあるんでしょうね。
そして、大人もこうだったのになあって思います。
品のある顔って輝いてますよね?政治家の顔の品の無いこと…
ああいう大人にならないように、子どもたちの輝く顔をたくさん経験させて大きく成長させたいものですね。
自分も小学生の指導をしているのですが、いろいろと課題がありKさんに相談したいのですがのってくれませんか?
おかえりなさい。
子どもたちの頑張る姿って泣けてきます。
自分は娘の所属するドッジボール部のコーチを本気でやるために転職しました。
大人が本気でやるからこそ子ども達も本気になれると感じています。
うちのチームは伝統も歴史も引き継いで来られなかったチームでして、現状なかなか火がつかず歯がゆい思いをしています。
全てが真似できるとは思いませんが、もしご教授いただけるのであれば、鬼の1対1の概要を教えてください!
合宿お疲れ様でした。
もう泣いちゃいましたよ!!!
人生の中で、選択を迫られる時は必ずあります。
確かに楽な方を選びたくなりますよね。
でも辛い道を歩むことで、辛く苦しい事と闘う自分と向き合い、乗り越えていく成長があります。
苦労したからこそ見える物って人生の宝になるはずですよね。
特に子供は楽して成長すると大人になってから苦労するので、小さいころから自分の人生を選択する術と苦労して乗り越える精神を身に着けておいた方が、大人になって大成すると思うのですよね。
子どもたちには良い思い出と成長になったと思います。
最後に手を挙げた子に大拍手!!
背中を押してあげた親友にも大拍手!
読んでてウルッて、目頭が熱くなっちゃいました!
自分は大人になってしまいましたが後悔しない人生にしたいと思いました。
その子はきっといい大人になりますね♪
俺もがんばります!
そうなった転機教えてください!
初期から読んでいますが、あまりにも感動感涙してしまい、思わず書いてしまいました。
人生を変える数十秒…
すごく濃縮された時間でしょうね。
私も子供の頃、同じような体験をし、それが今の自分の一部と自覚しています。
子供はいませんが、もしいたのなら、Kさんのような方に指導していただきたいと、心から思ったので、また言いますが、思わず書いてしまいました。
これからも応援しています!