かつて、無類の格闘技ジャンキーだった男、
編集者・Kです(あの頃はクレイジーだった)。
今回は、久々の名勝負コーナー、
あの無類の格闘技ジャンキーだった時代を
思い出しつつ、K-1からこの一戦をチョイス。
2002年のK-1 World GP 開幕戦より、
アーネス・ホースト×ボブ・サップ
の、第1戦!!!
なんともう16年以上も前のことなんですねえ。
ボブ・サップのブームって、そんなに昔かあ。
うーん、時のたつのは早いものだ。
サップは、平成において一時代を席巻した
一人であることは間違いないんじゃないかな。
この二人が、K-1の舞台で2回戦ったのは、
皆さんもよく覚えていらっしゃるかと。
どっちもエキサイティングだったのですが、
わしはやっぱり初戦の印象が強いですね。
わしは現地(さいたまスーパーアリーナ)で
観戦したのですが、あの日の熱気たるや
ホント凄かったですよ、ホント。
さて、この試合を語るためには、
なにはともあれ、当時のサップの快進撃を
思い出すところからスタートでしょう。
まあ、凄かった!!
ホント、とんでもない台風だった!!
彼が日本のマットに初登場したのは、
2002年4月28日、PRIDEのリングでした
(K-1じゃないんだよねえ、初戦は)。
相手は元・リングスの山本憲尚(現・宜久)
いやあ、衝撃の初登場でしたよ。
まさに「黒船」という言葉がピッタリかな。
何年・何十年のキャリアも、
圧倒的な素材の前には無意味、
とでも言えそうな、一方的な試合に。
相手の首根っこをつかまえて、
ただ力任せに殴りまわすだけ。
これだけで、
リングスで10年のキャリアを持つ山本を
一方的に撲殺してしまうのです。
某漫画のキャラクターじゃないけど
「無駄無駄無駄ァァァーー!!」的な。
オイオイオイオイ、
なんかとんでもねえのが出てきたでオイ、
と世間が騒ぐなか、
約1か月後、今度はK-1のリングに登場。
相手は中迫剛。
当然、再び大暴れ。
なのですが、
今度はルール無視のメチャクチャな試合。
あろうことか、立ち技のリングで相手を投げ、
さらには馬乗りパンチを放つという暴挙に。
大暴れは大暴れでも、今度は完全な「反則」。
これにより、
制御の利かないバケモノ的な印象がつき、
いよいよオッカナイ存在となったのでした。
その後(’なんとわずか20日後)、
再びPRIDEのリングに立ち、田村潔司を
11秒という秒殺劇であっさり葬り、
なんと、この年の目玉中の目玉、
「Dynamite! @国立競技場」のリングにまで
辿り着いてしまいます。
この試合は、彼の分岐点だったでしょうね。
相手は百戦錬磨のスーパースター・ノゲイラで、
最終的に彼の魔法の関節技の前に敗れることに
なるのですが、
格闘技4戦目のサップが、あのノゲイラを
追いつめたのです。
※開始早々のパワーボム、凄かったなあ
リング上で悔しそうに立ちすくむサップを
国立の9万人は拍手と声援で称えました。
それだけの試合を彼は見せてくれたのです。
この敗北でサップは人気と評価を得た、
と、わしは思っています。
体の大きな身体能力のオバケとしか
見られていなかった黒人選手が、
ここでそのポテンシャルを存分に披露し、
結果、善戦するも負けたことで、
日本の格闘技ファンの心を掴んだんだ、と。
その翌月には、再びK-1のリングに立ち、
シリル・アビディを、もはやサップにとっては
「お約束」ともいえる、瞬殺。
毎月、アホみたいにエキサイティングな
試合を披露し、彼は格闘技ファンの枠を超えて
日本中に知られる存在となります。
迎えた、10月5日、
彼はついに年末の風物詩K-1 World GP本戦の
開幕戦の舞台に足を踏み入れることに。
半年前に日本のリング(しかもPRIDE)で
デビューした男が、このグランプリのリングに
立ってしまうという。
しかも、優勝候補の一角として、ですよ。
いや、もう倒し方が分からないんですもん。
ゴングが鳴るや否や、
相手に突進してボコボコ殴って試合終了、
国立のノゲイラ戦以外は、
この展開しかないわけで、他のシーンを
目の当たりにしたことがないのです。
ボコボコに殴られて敗れる様しか
想像できないのですよ、みんな。
前述のノゲイラ戦を除くと、
反則負けとなった中迫戦を含めて、
3分以上戦っている姿すらまだ見たことない。
そのノゲイラ戦を見る限り、
サップのポテンシャルは異常、規格外。
コワイ、とにかくコワイ。
どうやったら勝てるの?
ていうか、どうやったらダウンするの?
ていうか、そもそも何が効くの?
何もかも分からないのです。
まあ「寝業は苦手」くらいかな、情報は。
でも、それKのリングじゃ意味ないし。
てなわけで、どう戦えばいいのか
全く分からないなか、グランプリの初戦は、
なんと「ミスター・パーフェクト」こと、
アーネスト・ホーストに。
当然、メインイベントです。
当時、館長や谷川さんが言っていました。
「これまで黒船に土をつけてきたのは、
いつもホーストだった」 と。
実際、そうなんですよね。
ノリノリ状態のときのベルナルドしかり、
一撃旋風のときのフィリオしかり、
「コイツ、どーすんの?」みたいな相手は、
このホーストが倒してきたという歴史は
確かにありました。
「規格外の男・サップも、ホーストならば
進撃を止めることができるんじゃないか」
そんな思いからこのカードが組まれたようです。
ファンも同じ思い。
自分たちが愛してきたK-1のリング。
鍛錬の積み重ねのうえでファイターたちが
このリングに集っている。
ホーストなんて、それの頂点のような選手。
Kの舞台で磨き抜かれた技術が彼の武器です。
そんななかで、
言ってしまえば「素材は異常だが、ほぼ素人」
であるサップにK-1を制されたくないのです。
むかえた決戦の日、
さいたまスーパーアリーナ。
冒頭の通り、わしはこの会場に居たのですが、
いやあ、熱気が凄かった。うねってましたよ。
手前の試合で、ジェロム・レ・バンナが、
もう一人の黒船・ゲーリー・グッドリッジを
葬っており、いよいよ期待は最高潮。
「バンナに続け!」
「この流れでサップも倒せ!」
「頼んだぞ、ミスター・パーフェクト!」
試合前の映像、俗にいう「煽りVTR」にて
ホーストはこんなことを言います。
「お前はまだ本当のローキックを受けていない」
「今日、お前はリングで倒れる」
会場中が、
うおおおおおーーーーーー!!!!!!!
ですよ。
そう、K-1リングの基本、ローキック。
あの規格外の図体のサップも、
ホーストのローを浴びまくれば
あるいは、何かが起きるんじゃないか。
期待が高まります。
リングに対峙する2人。
さいたまの観衆は大熱狂。
いまから凄い試合が始まるぞ。
この試合は歴史的な戦いにきっとなるぞ。
カーーン!!!!!
ゴングが鳴るや否や、
サップがホースト目がけて突進。
いつものパターン。
ここで、力任せにぶん殴られて
全員やられた。みんな秒殺された。
誰も勝てなかった。何もできなかった。
が、ホーストは違いました。
リング中央でその突進を受け止めると、
パンチの連打を浴びせ始めるのです。
これまで敗れた者たちとは全く違う。
サップも強引にパンチを放ってきますが、
ホーストはしっかりとガード、
そして、再び攻撃に転じます
これまで最初の突進で一気に勝負をつけてきた
サップが、初めて仕留めそこないます。
両者、リング中央でひと呼吸。
最初の波を乗り越えました。
うおおおおおーーーーーーー!!!!!!
やっぱりホーストは違うーーー!!!!!
そして、ホーストの「予告」どおり、
ローキックが発射されます。
ロー、来たあああーーーーーー!!!!!!
これを待っていたあああーー!!!!!
わしは、あの時の会場の声を忘れない。
会場全員が、ホーストのキックに合わせて、
「オェーーーイ!!!!!!」
「オェーーーイ!!!!!!」
「オェーーーイ!!!!!!」
大合唱、猛烈な大合唱。
22,000人の大合唱。
何発目かで、ぐらつくサップ。
うおおおおおーーーーーーー!!!!!
効いてる、効いてるーーーー!!!!!
イケる、イケる、ホースト、イケる――!!
浴びせ続けられるローキック。
会場にコダマし続ける大合唱。
が、
倒れない…!!!!!
ローキックを何発浴びても、
サップは倒れない。
そこからは、K-1ファンにとって
悪夢のような時間となりました。
規格外のパワーで、再び強引なパンチを
放ち始めるサップ。
ガードしていようがお構いなし。
メチャクチャなパンチのラッシュ。
ホーストがズルズルと後退し始める。
圧倒的に押されている。
目の上をカットし、血の流れる大苦戦。
ミスター・パーフェクトの
キャリアとテクニックが、
半年前にデビューした圧倒的素材の前に
屈しようとしている。
そして、
試合終了を告げるゴング。
22,000人を絶望に陥れるゴング。
まさかの、
ホースト、敗北。
最終的には流血による
ドクターストップでの決着でしたが、
当時3度のワールドチャンピンに輝いていた
スーパースター、アーネスト・ホーストが
デビューして間もない男に敗れたのです。
信じられない…。
ホーストでもダメなのか…。
才能の前に努力は無力なのか…。
なんとも形容しようのない空気が
さいたまスーパーアリーナを包み込みました。
忘れられないなあ、あの日のたまアリ。
凄い熱気だったんだ。
凄い合唱だったんだ。
そして、凄い絶望感だったんだ。
凄い夜だったなあ。
エキサイティングな試合、
会場の熱、テレビ越しには放送席の熱も、
全部合わせて、名勝負だったわ。
あの会場に居たこと、
ちょっと自慢です(笑)。
うねってるよ、空気がうねってる。
こういう緊張感がたまらないんだよね
↓

![]() |
嗚呼、名勝負(11) K-1 World GP 2002 開幕戦 ホースト×サップ へのコメント一覧
サップはその後もホーストを返り討ちにしましたが、この試合でダウンを奪われたことが後にミルコに敗れて没落する「終わりの始まり」になった気がします。
私はテレビでの観戦でしたが相当興奮したのを覚えています。
今観ても面白いなぁ。ホントにたまらない緊張感ですよね。
あの頃のK-1やPRIDEは試合展開を予想する楽しさと、それを裏切られる驚きがありました。
週末、RIZINを見に行きます。K-1やPRIDEにはなれないし、なる必要もありませんが、手に汗握るようなあの頃の興奮をどうしても期待してしまいます。
サップは何も覚えてない素の状態が一番強かった気がします!
決勝トーナメントでもホーストはサップに負けるのに、結局4回目のチャンピョンになったってのが伝説ですよね!
Kー1、PRIDEは思い出すだけで泣きそうになります。
ホーストvsサップはその時代の名勝負の一つです!
私も、ここで紹介されている 「山本戦」「田村戦」 「ホースト戦」の3試合と、2度目のホースト戦は、会場で観戦していました。
アメリカでは、『NFLのプレイヤーこそが、最高のアスリートである』というような評価の話を聞いたことがあったので、改めて、その桁外れのポテンシャルの高さに、驚愕したものでした。
ボブ・サップの試合で、敢えて、インパクトのあった試合をもう1試合上げるとすれば、新日本プロレスの東京ドーム大会で行われた、中西学とのシングルマッチではないでしょうか。
正面飛びのドロップキックで、中西学を場外に吹っ飛ばし、リングアウト勝ちをおさめた試合も、説得力抜群でした。
ボブ・サップが日本で人気を博したのは、試合での豪快な勝ちぷりに加え、エンターティナーとしての才能にも秀でていた点ですね。
もし、その後も快進撃を続けていられたならば、ブルーザー・ブロディに勝るとも劣らない、
“インテリジェンス・モンスター”となっていたのではないでしょうか。
私も衝撃でした。個人的には、サップを初のダウンまで追い込んだ2戦目の方が印象に残ってます。
「俺は勝ちにこだわるから、K.Oには執着してこなかった。だがサップだけはK.Oしてみせる。絶対に!」
ホーストにここまで言わせたのはサップぐらいです。そして秘策のボディーブローで、実際にダウンまで奪ったシーンには雄叫びをあげたものです(笑)。しかしその後、またも逆転のK.Oまで演じた当時のサップには、誰も勝てる予感がしませんでしたね。
K−1の名勝負なら、個人的にはこれも取り上げてほしいです。
「99年GP、アーツ VS バンナ」
おそらくはK−1史上最高に贅沢な70秒!
壮絶な一撃K.O合戦を、Kさん目線で語ってほしい!
あわーわーーわ
て感じです。
名勝負というなら1998年のアーネストホースト対ジェロムレバンナではないでしょうか?(^o^;)
K-1の瞬間最大風速を叩き出した人でしょうね。
最初のあの野獣感、がむしゃらに突進しまくるあのスタンスが、他におらず、いっときですが強くいれた要因なのではとずっと思っています。
ノゲイラの三角締めを、あのパワーボムでほどいたサップ、やばかったなー。
ホーストの二戦目も、全く同じ展開で勝ったのも印象的でした。
I'm four times champion!!!
I'm four times champion!!!!
ホーストと言えば、この言葉が忘れられない
個人的には踵落としのアンディーフグが好きでした。