男の声。
「ん?」
振り返る女性。
8月、
さいたまスーパーアリーナ前の広場。
バスケファンであふれかえるこの場に、
やはり彼らはいた。
「お疲れっす! 赤木マネージャー!!」
手を挙げて駆け寄る天崎。
「でけえ声出すなよ、恥ずかしい」
しかめっ面の荒石。
晴子、クスッと笑う。
「ホント元気いっぱいね、天崎君。
でも、もうマネージャーじゃないわよ」
そして隣には彩子。
「まったく、いつも元気で羨ましいわ」
もちろん、この男も。
木暮 「今日は会場に来たんだな」
天崎 「モチロンっす!」
荒石 「この勝負は見逃せねえよ」
そしてもうひとり。
ぺこりと頭を下げる須形。
「こんにちは」
晴子 「ふふっ、須形君はいつも礼儀正しいのね」
彩子 「湘北っぽくないわ」
荒石 「決戦だぜ、決戦」
天崎 「死ぬ気で応援っすよ」
木暮、アリーナを見上げる。
「ああ、いよいよだ。赤木も三井も宮城も、
日の丸を背負って、アメリカと戦うんだ。
凄いことになったな、ホントに」
夏のアリーナ、
場内はかつてない熱気に包まれていた。
「さあ来たぞ、この日が!!!!!」
「史上最強世代が、アメリカと激突だ!!」
「今日は日本バスケ史に残る1日になるぞ!」
この熱を伝える実況席には、
いつものコンビ。
道谷 「よろしくお願いします!」
塚本 「来ましたねえ、この日が!」
ゲスト解説席には、
ミスター・バスケットボール。
佐戸 「よろしくお願いします」
そしてもうひとり。
小柄な男性の姿
佐戸 「本場の解説頼むよ」
道谷 「期待してますよ」
男は苦笑い。
「いやあ、喋るの苦手なんで…」
佐戸 「何言ってんだよ、NBA選手が」
ゲスト解説の椅子に座るのは、
日本のミスター・バスケットボールこと
佐戸健一と、
日本人初のNBA選手、
樽瀬勇太だった。
樽瀬 「元・NBAですよ」
佐戸 「また舞い戻るだろ?」
樽瀬 「それは日本で勝ったら、ですね」
樽瀬勇太 ――
中学時代から「魔法使い」と呼ばれ、
全国に名を馳せたポイントガード。
山王高校時代に日本一を幾度も経験し、
米国の大学へ進学。
その後、日本人初のNBA選手に。
初めて夢の扉を開く偉業を成し遂げるも、
その後戦力外通告を受け、一度帰国。
秋に開幕するBリーグに参戦との情報が
先日報じられたばかりだった。
また、実弟の樽瀬俊輔も兄の後を追うように渡米。
9月からは本場の大学で揉まれることとなる。
佐戸、ニコリ。
「Bリーグも盛り上げていかなきゃな。
そのためにも今日の試合は大事だ」
樽瀬 「はい」
「樽瀬が?」
「はい、今日はゲスト解説らしいですよ」
「ぬ?」
観客席、
森尾、杉山、桜木の東洋自動車トリオ。
森尾 「そうか、もう帰ってきてたのか」
杉山 「森尾さんは久しぶりなのでは?」
森尾 「そうだな、しばらく会ってないな」
桜木 「知ってるのか、モーリー」
森尾、頷く。
「ああ、俺やケン(佐戸)の1コ下だからな。
高校の時から凄かったよ、アイツは」
杉山 「あの小さな体で凄いですよね」
桜木 「NBA……」
森尾、ニコリ。
「さあ、この試合NBAを知る男にはどう映るか」
杉山 「ビックリさせてやりたいですね」
そして、
いよいよその時が来た。
ユニバーシアード・バスケ競技
決勝トーナメント1回戦
日本×アメリカ
道谷《さあ、やってまいりました!!》
塚本《来ましたねえ、この時が!!!》
道谷、興奮実況。
《史上最強と呼ばれるこの世代が、
ついに世界一の強国との対決を迎えます》
塚本、興奮解説。
《相手も史上最強と呼び声高い世代です。
人呼んで「ドリームチーム・ジュニア」、
本当に物凄いチームですよ!!》
「うおおおおおーーーーーー!!!!!」
「頑張れ、日本ーーーーー!!!!!!」
「相手は王国だ! 思い切り行けーー!!」
日本代表
スターティング・ラインナップ
PG/4.牧 紳一(188cm/85kg)
SG/5.諸星 大(191cm/80kg)
SF/15.沢北栄治(193cm/86kg)
PF/6.河田雅史(203cm/98kg)
C/13.森重 寛(208cm/110kg)
アメリカ代表
スターティング・ラインナップ
PG/6.A・アーバイン(183cm/75kg)
SG/7.K・キートン(196cm/85kg)
GF/8.R・アラン(196cm/90kg)
PF/13.O・ハンティントン(206cm/108kg)
C/14.T・マイカン(211cm/110kg)
道谷、先発の5人を伝える。
《日本は諸星が2番の位置に入りました。
一方、アメリカはこれまでと同じ布陣。
注目のアーバイン、アラン、マイカン、
揃い踏みです!!》
塚本、コブシを握る。
《実は体格差はほとんどありません。
本当に日本は臆せず立ち向かうことですよ!》
道谷《佐戸さん、日本のポイントは?》
佐戸が返す。
《立ち上がりの1〜2分ですね。主導権を獲られると
一気に行かれてしまいます。まずは最初の時間を
しっかりと、しっかりと、戦いたいです》
道谷《樽瀬さんはどうご覧になりますか?》
樽瀬の答えも同じだった。
《同じく立ち上がりです。できれば先制したい。
思っていたのと違う、と思わせたいですよね》
道谷、開戦を告げるアナウンス。
《ゲスト解説のおふたりから「立ち上がりが肝心」
とのコメントをいただきました! さあ、日本は
その通りのスタートを切ることができるでしょうか、
大注目の一戦、間もなくティップオフです!》
一度マイクが切られると、道谷はコブシを握った。
(決まった…!!! いまの締め!!)
佐戸 「……。」
(アナウンサーの快感みたいな感じなのかな)
樽瀬 「……。」
(手応えバッチリという顔ですね)
日本ベンチ、
腕組みの唐沢。
「いいか、先制だ。なんとしても先制するぞ」
「ハイ!!!!」
陸川が続く。
「やることは同じだ。空いたら撃つ。
ためらうことはない。何も変わらない」
「ハイ!!!!」
唐沢が続ける。
「アメリカの守備は速いぞ。一瞬でも迷うと
すぐに詰められる。いいか、絶対に迷うな。
行くなら行く、回すなら回す」
牧 「よし、攻め気で行くぞ」
河田雅 「オウ」
唐沢 「沢北、何かあるか?」
沢北、ニコリ。
「必要以上に意識しないようにしましょう。
どんなに凄い奴らだとしても同じ人間ですから。
僕たちだって強いチームですよ」
陸川 「ああ、その通りだ」
唐沢 「さあ行くぞ、すべてを出し切って来い」
日本代表12人、円陣を組む。
牧 「行くぞ!!!!!」
「オウ!!!!!!!!!!」
スタートの5人がコートに出る。
「おおおおおーーーーーーー!!!!!!」
「日本ーーーーーーー!!!!!!」
「牧ーーー、頼むぞーーーー!!!!」
「沢北ーーーーー!!!!!!」
その10秒後、
「ドリームチーム・ジュニア」もコートへ。
「あれがアーバインだ!!!」
「マイカン、でけえ!!!!」
「未来のNBAオールスター軍団だぞ!!!!」
アーバイン、沢北の顔を見つけニコリ。
『エージ・サワキタだな?』
沢北 『知ってるのか? ありがたいね』
アーバイン 『カエデ・ルカワは面白かったよ』
沢北 『そうらしいな、だが今日はもっと面白いぜ』
アーバイン 『そいつは楽しみだ』
沢北 『俺たちが勝つ』
牧、ニコリ。
「さあ、挨拶はバッチリだな、行くか」
両軍メンバーがセンターサークルを囲う。
ジャンプは、森重とマイカン。
史上最強のユニバ日本代表、
いよいよ大一番が始まる。
続く
スラムダンクの続きを勝手に考えてみる(913) へのコメント一覧
そして樽瀬兄登場!
世界が広がります!!
細かな描写でいくのか、ダイジェスト的に流すのかKさんの手腕が楽しみです!!
樽瀬が出てきたなら細かく進みそうな気がしますが果たして…?
樽瀬兄が出てきたなら細かく進みそうなイメージですが果たして…
ゆうたと、俊輔って逆じゃないですか?
アメリカ戦楽しみです!
翔北トリオでて欲しいな(^^)
これは……奇襲作戦やるんじゃ!
「いっ」
まさかの諸星スタメン!!
今回はスピード勝負の場面ありそうですね!りょーちんの出番ありますよね?!
三井タイムも…!
楽しみに続き待ってます(*^O^*)
でもkさん樽瀬兄弟の名前が逆になっていませんか?
確か樽瀬兄が勇太だったような…?
俊輔と勇太、兄弟逆になってませんか?
ところでアメリカの大学に行く樽瀬勇太はジョージワシントン大に行った渡邊雄太のオマージュでしょうか…
ふと気になりました
第3Qから山王戦のように一気に爆発してアメリカにもっていかれそうかな
Kさん原作と似た展開や台詞をサービスでよく使ってくれるしね
兄と弟、逆になってた…!!
去年のW杯と同じ様に主導権を握られる展開になるのか…
立ち上がりから楽しみすぎる!!!
あードキドキする。
牧とアーバインのマッチアップ、楽しみすぎる。
日本がアメリカ相手にどれくらいやれるのか。
更新が待ち遠しすぎる!
いよいよアメリカ戦❣️
沢北も強気(^∀^)
でもそのノリで行ってほしい💪
次回が楽しみです🙌
そして花道…アメリカの技術を吸収しよう❣️
試合を通して、1番感化されそう。
>>12
田臥もハワイの大学に通ってたのですよ
毎回楽しませてもらってます!!!
揚げ足ごめんなさい
面白いからこれからも末永く応援してます、なにとぞ!
面白いからこれからも末永く応援してます、なにとぞ!
「今大会のアメリカ代表は、これまでとは別格」というようなことを言っていたはずの沢北。
『俺たちが勝つ』
と宣戦布告してみせるとは頼もしい限り。
偵察に行った彦一は弱点を見つけられなかったが、もしかすると、何らかの攻略の糸口が見えているのかも、期待したいですね。
そして、期待と言えば、前回のドイツ戦では出場時間0に終わってしまった諸星が、スタメンで出場。深体大三銃士と呼ばれる三人の中では、一番ベンチを温めることが多いだけに、そのフラストレーションを爆発させてほしい。
もし、アメリカ相手に“奇策(アレですよ、アレ)”に出るのならば、彼のスピードが絶対に活かされるはずだ。
河田兄の背番号は6番、森重と同じになってますね
ミスだらけじゃこりゃ。
コメントどうもです。
このコメントで3人も指摘してくれてるんだから、お礼ぐらい言いなさい
でも昨日の敗戦が、澤北、赤木、森重を更に強くしたはず。桜木、仙道、深津、清田、福田には世界一を分析してもらいましょう。で?彦一要チェックや!の結果わっ!?笑
もう1人は誰だろう?90年代はあまりわからないなあ。
ありがとうございます!
打倒アメリカ!
早く続きがみたい!
いつもありがとうございます!
第三者であるあなたが、上から目線で偉そうにいうことではない。この指摘をしてあげたんだから、私にお礼を言いなさい
第三者であるあなたが、上から目線で偉そうにいうことではない。この指摘をしてあげたんだから、私にお礼を言いなさい
ありがとうございます。
一生ついていきます。
大学編(関東学生トーナメント)では名前も出てこなかった樽瀬(弟)くんの近況が、ついに明かされましたね。何となく、予想はしていたとはいえ、やはり、アメリカですか。
しかし、この先の日本代表のPGの座を争う闘いは、熾烈を極めそうですね。
何せ、ユニバ日本代表の牧、藤真、宮城、現在負傷中の深津、横浜ドリームスの清田の5人に、この樽瀬(弟)くんが加わるわけですし、コメント欄には、多くの仙道待望論もありますからね。
果たして、Kさんの考えるベストメンバーとはどういう組み合わせなのか。それが描かれる日まで、このブログが続くといいなぁ。
楽しみだ。
まぁ今回は負けるだろう。
そしていつか来る2回目のアメリカ戦で桜木流川仙道が入って勝つ、というシナリオ。
笑い飯のm-1のパロディ??
将来的に、
PG仙道
SG沢北
SF流川
PF桜木
C森重
だと思うけど。
諸星に期待!!
#7 ケリー・キトルズ
#13 オセラ・ハリントン
だったかと思います。
三井、神
流川、沢北、
桜木、河田兄、赤木
森重、河田弟
この12人の日本代表をみてみたい。
補欠 深津 樽弟 宮城 土屋 諸星 福田 清田
かなー。。。
楽しみにしてます♪
よっ大統領!
なんと慈悲深い、、あなたと同じ地球の上を歩いていることがとても嬉しい限りです。
虫以下の私にいつもお言葉をいただきありがとうございます。
舐めすぎ。40点くらい取れるだろ!
110-40
まあお前が白けても何も影響ないけどな。ブログにも他の読者にも。33のコメントのほうが全然ムカつく。お前の煽りはまだ甘いよ。
本当にありがとうございます!
貴方のような方にこのコメント欄に降臨いただけただけで我々一般人は幸せです!
大丈夫、今度は同じ戦力のチームを2つ作れる
代表の中でも、何でもできてバスケが上手い選手を中心に組んでる
でもやっぱりインサイドが不安だな〜森重をシャックとして扱うならダンカンに当たり負けるわけにはいかないけど、あくまでも和製シャックなら力負けも有り得るのか…。
力も高さも敵わない時、森重はどうするのか?
それとスゲー今更だけどいつから森重ってあんなゴーレムみたいな無口タイプの大男だったっけ??
描写に違和感なくて今まで疑問に思わなかったけど、前回の練習の時にふと思った。
結構オッチャンとくだけて喋る印象あったからどっちかっていうと荒石みたいな雰囲気が近かった気がする。
そいだー。大正解!
そうだー。大正解!
111-11
と言うのも沢北はドラフトにかかるだけの実績は残したと言ってたが、一巡目とは限らない。と言うか普通に考えれば名門ゴンザガでエースを張った八村の実績のほうが上だろう。
そしてドラフト前のアイバーソンとダンカンは、冗談抜きにNBAの各ポジションでトップ3には入る選手だった。
たぶんこのブログでは牧以上のPGである樽瀬も、現実と同じようにNBAで通用したとは言い難かったんだろうね。
考えれば考えるほど日本に勝ち目はない…
が、現実と違うのはアメリカ相手でも通用する選手が1人や2人しかいないという訳ではないこと。
パワーだけなら森重はマイカン以上だろうし、流川でもある程度通用したなら沢北だって1on1で勝負できる。現実の日本にこの代表ほど3Pの安心感はない。
個で劣っているのは否めないが、勝負できないほどの差ではないあたり、どうしても期待してしまいますね。
懐かしい〜
クロージャーとかロレンゼン・ライトもいたなぁ
アメリカ相手に通用する選手、しない選手。
未来の代表落選組には辛い試合になりそう。
お前がNO1だ。
124-26
樽瀬兄が出るとは!
良い解説期待してます!
あと、最近いろいろと煽る人がいるみたいですが、Kさん気にせずに書いていって下さい!!!
具体的にどうなるの?
やはり海外相手だとサイズとパワーが足りないのかな。
イマジンしよう。ジョンも言ってるで。
ポケモン?
パワーとサイズの勝負をしてこなかったからこそ、パワーでも戦ってきた牧より通用しそうな気がします。
5人の流川がボールを取り合って喧嘩になる
勝ってるのは牧のとこのフィジカルぐらい
バスケでは身長よりもウィングスパン、スタンディングリーチが大事なのもっと浸透して欲しい
このコメ好き
ご無沙汰しておりました。。
久しぶりに覗いたら、、、、流川君が出ていた!
名前だけだけど、、嬉しい!!
コメントの内容よりも名前の状況を詳しく知りたい
4545-19
何回読んでも楽しいです。
樽瀬の紹介の時に
山王高校時代と書いてあるのですが、
工業が抜けているなぁーと思いました。
続き楽しみにしています!