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止まらないドキドキ、止まらない汗、自分のブログの訪問者がとんでもないことになっている。
トイレに駆け込んだ九門は、twitterの検索ボックスに「異世界バスケ」と入れてみた。いわゆる「エゴサーチ」である。
暴風の発生原因は、すぐに明らかとなった。
プロバスケ選手・夏木修司(ナツキ シュウジ)が「異世界バスケが面白い」とURL付きでつぶやいていたのだ。
そして、リツイートを示すアイコンの横には「5800」という数字が。
ドクン!!!
再び九門の胸が高鳴る。
夏木修司は、未来のNBA入りも期待される超人気プレイヤー、そのフォロワー数は8万人を超えている。芸能人やプロ野球選手、Jリーガーならば、もっとフォロワーの多いアカウントがいくらでもあるが、3年前のバスケ選手で8万以上はなかなかいない。
一方、野球やサッカーほど一般認知度の高い競技ではないがゆえに、フォロワーのロイヤリティは高かった。数では芸能人に及ばないものの、そのフォロワーは「濃い」のだ。大型台風を発生させることなど容易なことだったのだろう。
あの日、店長は「跳ねたら一気に行く」と言っていた。
そして、いま、跳ねた。
息を整えながら、もう一度ブログ管理画面に戻る。
訪問者数は1万を超えようとしている。そしてページビューは4万を突破している。訪問者数の4倍以上のページビューがあるということは、つまり、ひとりひとりが何ページも閲覧しているということ。おそらくは、「異世界バスケ」が第1話から順に読まれているということだ。
ブログ「雲の筆」を立ち上げて、約7か月が経った頃だった。「異世界バスケ」の連載は50話を超えている。この勢いだと、ひとりあたりの閲覧ページ数がどうなり、ページビューの合計がどうなるのかは、火を見るよりも明らか。
再度息を整えながら、数字を細かく確認していく。
管理画面を見る限り、訪問者数の上昇は緩やかになったようだ。この大量流入を呼び込んだのはtwitterである。ツイートは随時流れるものであり、世間のタイムラインから消えるのもまた早い。どうやら台風は通過しようとしているらしい。
だが、ページビューの上昇は止まらない。リロードするたびに1000単位で数字が動く。暴風域は脱したが、各所で生じた小さな風は一向に止まない。九門は謎の恐怖感を覚え、管理画面を閉じた。
そしてトイレを出て自分の席に戻り、再びライターの原稿を読み始めた。どうにもなかなかアタマに入ってこないが、一生懸命集中して読んだ。
2時間後、
「お前、ちゃんと読んでんのかよ!!」
九門は、久しぶりに編集長に怒られた。
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小説/僕のラノベは世界を救う 第11話/ついに跳ねた へのコメント一覧
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