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  • 2020年12月20日23:17

小説/僕のラノベは世界を救う 第21話/編集長に呼ばれた

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目次はコチラ

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第21話/編集長に呼ばれた

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 12月になった。


 九門の部屋にはコタツが出ていた。

「暖か〜い、もう出とうな〜い」
 今日のサクラは、ソファではなくコタツに入り、ミニ雪見だいふく。


 ブログ・ラノベの更新ペースを掴んだ九門は、かつてのように一心不乱にキーボードを叩くことが少なくなった。サクラがいる時はPCを閉じていることも多い。とはいえ、一時期より九門の様子が落ち着いたことで、PCを開いてもサクラは不機嫌にならなくなっていたのだが。

「そろそろ新幹線の切符買ったほうがええんかな」
「そうだな。年末は混むからな」


 あと3週間ほどで、ふたりはサクラの実家に行くことになる。


 九門は初めてサクラの両親に会う。あるいは、年末というタイミングを考えると、両親以外の家族・親族もいるかもしれない。もしかしたらサクラの地元の友人と会うようなことも。

 初回からなかなかのラージヒルだな、と思いつつ、九門はスマホを覗きこんだ。久々にtwitterでエゴサーチ。

「異世界バスケがマジサイコー」
「イセバスにドハマリしているのは私です」
「オレも中学生時代にダンクができたらとか妄想したクチだw」
「てか、まだダンクをしない主人公にイラッとくるw」


 うむ、いい感じだ。

 気分は上々の九門。そして、しばらく画面をスクロールして発見した、このツイートでそれは頂点に。


「異世界バスケの舞台って別に異世界じゃなくね?」

 九門は思わずニヤけた。


 twitterから元サイトに飛んでみる。5ちゃんねるにスレが立っていた。九門が「異世界バスケ」の執筆を始める際に思い描いた光景だった。読者の反応が狙い通りになるというのは、編集者がガッツポーズをとる瞬間のひとつである。


 このときニヤけた九門は、執筆者ではなく編集者だった。

 いい感じだ。
 このあいだ考えたチーム移籍の展開をココでぶっこむか。
 ドンドン話が動いたほうが面白いだろう。
 でもバスケが上手くなってチーム移籍って、いよいよ普通の世界の話だな。
 どこが「異世界バスケ」だよ。

 構想が膨らむ。そして自分でツッコみ、再びニヤける。


「なんか笑ろうとる、キモい」
「ん?」

「たまにそーゆう顔になりよるよ、大地くん」
「あ? ああ、そうだっけ」
「どしたん?」
「いや、面白いスレを見つけて」
「ふーん」

 いろいろ詮索されると面倒だな、と思った九門は、すかさずサクラが(たぶん)喜びそうな話題をぶつけた。
「今日は暇だし、どっか行くか?」


「ん?」

「買物か、映画か、まあ何でもいいんだけど」


「はぁ? 『何でもいい』?」
「……!?」

 どうやら不機嫌になった模様。このシーンで「何でもいい」という台詞は不適切だったか。九門、作戦失敗。ニヤニヤ調査から逃れるべく撃ったタマだったが、サクラの機嫌を悪くさせる結果に。

 九門、考える。そして、咄嗟にこんな言葉が出る。
「ん、まあサクラがいれば、何でもいいよ」


「……!?」

 バタンと突然寝ころぶサクラ。

 コタツを挟んで向かいに位置するサクラの顔を、九門が覗き込む。サクラは顔を横に向け、九門と視線が合わないようにしている。

「ん? どーした?」
「いっしししし…」

 横顔が物凄く気持ち悪くニヤけている。咄嗟に出た言葉だったが、機嫌はよくなったようだ。

 九門も少し笑った。


 翌日、
 さっそく昨日買ったコートを着て出社した九門は、編集長に呼ばれた。

 編集長は、なにやらマジメな表情。これから「ガッハッハ」と笑いながら、しょうもない話をしようとしている人の顔ではない。

 これは何かマズいミスでも発覚したか? どれだ? いや、思い当たるものは特にない。ソワソワしつつ、応接部屋に入る九門。


「おう、実はな……」


 人事異動の話だった。



続く


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