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  • 2021年01月12日07:30

小説/僕のラノベは世界を救う 第31話/自分の実家に来た

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第31話/自分の実家に来た
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「クルマ少ないな〜」

 助手席のサクラが外を見ながらつぶやく。


「ま、大晦日だからな」
「みんな用事ないんじゃろか」

 岡山のイベントから一夜明け、大晦日。ふたりは、九門のクルマで九門実家へ向かっていた。いまの九門の自宅からは、約1.5時間、ちょっとしたドライブである。

「アタシ、何て言って挨拶したらええの?」
「普通に、初めましてよろしくお願いします、でいいだろ」
「あぁ〜、緊張するわぁ」
「ウチはそういう家じゃないよ」

 といいつつ「まあ、サクラの家ほどふんわりしてないかも」とも思った九門。


 辿り着いた九門の実家は、二階建ての一軒家。家屋のサイズは、サクラの実家より少し小さい程度だが、何より違うのは庭の広さ。
 
「名古屋じゃあんなデカイ庭の家はなかなかないよ」
「ふーん、でも大地くんのお家の方がキレイじゃな」
「そうか? 同じようなもんだろ」


 ピンポーン。

 呼び鈴を鳴らすと、出てきたのは九門の母親だった。
「おかえり〜。寒いなかご苦労さま〜」

 サクラの母と同じくショートカット、ただし直毛。因みに、体型的には九門の母の方がやや細身だろうか。

 久々の我が家に挨拶をする九門。
「ただいま」

 そして、サクラ。
「あ、あの、初めまして…」

 九門母、ニコリ。
「ふふふ、挨拶はあとでいいわよ。寒いから上がってちょうだい」

「うん」
 九門は靴を脱いだ。

 サクラは、いまのフライングが恥ずかしかったのか、ちょっと顔が赤くなっていた。


 ふたりは母親の案内で居間へ。

 真ん中には大きなコタツ。そこにミカンは置いていないが、おおよそサクラの実家の居間とよく似た風景である。

 九門母は、二階に向かって声をかける。
「お父さ〜ん、大地が来たわよ〜」

 ドッドッドッドッ……。階段を降りてくる音。

 父親はやはり後から登場。こういうのは、どこの家も同じなのだろうか。

 九門父は、九門と同じくらいの身長。子供のころからよく父親に似ているといわれた。だからだろうか、サクラは九門父を見ると、笑顔になった。

 九門父もつられて笑顔に。そして、サクラに「いらっしゃい」と声をかけると、コタツへ。

 そこに九門母がお茶を出す。
「はいはい、寒いからふたりともコタツに入って、ほら」

 九門、サクラ、並んでコタツに入る。向かいに、九門の両親が並ぶ。つまり、サクラの実家の時と同じ陣形だ。


 九門が紹介する。
「こちらがサクラさん」

「初めまして、よろしくお願いします」

 1文字と違わず、九門の提案どおりに挨拶をする。

「大地の父です、はじめまして」
「母です、今日はありがとうね」

 九門はすぐさま伝えた。
「この人と結婚することにしました。よろしくお願いします」

 なぜか敬語になってしまった。普段言い慣れないことを言うとこうなる。いわゆる「台詞」になってしまったのだ。


 九門父は、少しだけ姿勢を正し、穏やかな顔でサクラに告げた。
「まあ、こんな息子ですが、人を不幸にするような男じゃないと思うんで。よろしくお願いします、サクラさん」

「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします」


―― 人を不幸にするような男じゃない


「……。」
 なんだか褒められたような。ちょっとくすぐったかった。

 九門母、立ち上がる。
 「サクラさん、お腹空いたでしょ? ご飯にするわね」

「は、はい、ありがとうございます」
「そうだわ、さっそく手伝ってもらおうかしら?」

「……!?」
「お寿司だから、そんなにやることないけどね」

 サクラ、笑顔に。
「ハイ、手伝います!」

 九門、眉間にシワ。
「おいおい、もう手伝わせるのかよ」

「いいのよ、家族になるんだから、ねえ?」

 サクラ、再び笑顔で返事。
「ハイ!」

 ふたりの会話の様子を見て、九門父は微笑んでいた。笑顔の感じは、九門にそっくりだった。それを見て、またサクラは笑った。


 キッチンに向ったふたり、
 そして、コタツに残ったふたり。

 九門父、つぶやく。
「娘ができるのが、嬉しいんだろ、あれ」

「あ〜、そうかあ、なるほど……」

 九門の家は、両親と九門の3人家族。ずっと男2、女1の比率で過ごしてきた。食事の時間になると、男ふたりが「メシはまだか」と文句をたれるのが常だった。

 そうか、女性が新たに家族になることが、母さんには嬉しいのかもな。

 九門は笑った。


 やはり九門父の笑い方とそっくりだった。



続く



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