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  • 2021年01月14日07:30

小説/僕のラノベは世界を救う 第32話/年が明けた

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第32話/年が明けた
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 元旦、

 目が覚めると、そこはかつて自分が毎日を過ごしていた部屋だった。


 1月の朝、冷え冷えの部屋。布団から手だけを出して、九門はスマホを取った。時計の表示は午前8時30分だった。


「あ、起きた」

「……!?」

 横を見ると、サクラがうつぶせでスマホを弄っていた。布団から頭と手の先だけが出ている。まるで亀のようだ。


「大地くん、すごいイビキかいとったよ」
「そうか、ちょっと呑みすぎたのかもな」


 昨日の九門の両親への挨拶はあっさりと終わった。サクラの実家に行った時もなかなかトントン拍子だったが、それ以上にあっさりと。

 九門はすべてを両親に伝えた。2月から東京に転勤になること、サクラと一緒に暮らすこと、それをサクラの両親に報告したこと、すべてを伝えた。

 両親とも喜んでくれた。特に母親は早くもサクラのことがかわいくてしょうがないらしい。

 あとはひたすらに呑んで食っただけ。特に九門は普段よりたくさん呑んでしまった。ストックされていた「やること」が片付いて、気楽になったからだろうか。

「大地くんのお父さん、笑った顔が大地くんと一緒なんよ」
「そう?」

「ふふふ」

 てことは、ブログのコメント欄を見てニヤニヤしている時の顔も似ているのか?
 でも、どんな顔か分からないな。
 ていうか、父さんがニヤニヤしているのをあまり見たことがない。

 そんなことを思いつつ、九門は管理画面を開いた。読者から「あけましておめでとう」的なコメントが何百通も届いている。

「去年は異世界バスケに出会えて良かった」
「今年もイセバス楽しみにしています」
「今年こそダンクしろwww」

 絶賛の嵐である。我ながら人気者になったものだ。

 九門はニヤけた。

「その顔は似とらんなぁ」
「そう?」

 似ていないらしい。


 ボサボサ頭のまま、ふたりは居間へ。

「あけましておめでとうございます」
 昨夜24時ちょうどにも挨拶はしたが、改めて。

 その後、4人で朝食のお節料理を食べ、初詣に行き、大型ショッピングモールで福袋を買い、と、この日はマニュアル通りの元日を過ごした。

 昨日までに色々クリアしておいてよかった。
 いい正月だ。


 三が日はすべてサクラと一緒に過ごした。「異世界バスケ」の更新はしばらく止まることとなった。ただ、年末年始ということでみんな寛容だったのか、幸いなことに読者から更新の催促のようなコメントは来なかった。

 九門は思った。うーん、正月だなあ、と。


 そして1月4日、新年初出社の日。

 近場の牛丼チェーン店で昼食中の九門は、一通のメールに気づいた。例のプロ契約の件だった。

 「鬼面ライター様 この度は返信遅れてしまい申し訳ございません。当社が冬期休暇の期間だったため……」という始まりの、かなり丁寧な文面だった。

 その丁寧な返信に、謎のプライドで少々ぶっきらぼうなメールを送った九門はちょっと心を痛めつつ、今度はこっちも前回より丁寧に返信した。

 そこから2往復ほどのやりとりのすえ、九門はプロ契約をすることになった。牛丼チェーン店で40分ほど時間を使ってしまった。店員の視線が冷たかった。


 帰宅後、九門は内容を改めて確認した。

 どうやら契約書にサインをし、口座登録をすれば、今月からプロになるらしい。
 そこから報酬の計算が始まり、最初の入金は2月末とのこと。
 
 報酬の計算ロジックも教えてもらったが、面倒くさがりの九門はそこは特に気にせず、とにかく一旦始めてみて金額を見てみようと、サインをした。

 その際に、もうひとつ管理会社から提案があった。

 ―― twitterをやったほうがいい

 そういえばそうだ。そのとおりだ。
 確かにこのご時世、情報を広めようと思ったらSNSは欠かせない。

 身バレはイヤなので「鬼面ライター」として、新たにtwtterのアカウントを作ることにした。そしてブログ「雲の筆」に、「twitterはじめました」という記事を投稿して、布団に入った。


 翌朝、九門は目を疑った。

 わずか1夜にして、フォロワーが6万人を超えていた。



続く



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