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  • 2021年01月18日07:30

小説/僕のラノベは世界を救う 第34話/影響力を知った

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第34話/影響力を知った

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 1月11日、

 成人の日を含む三連休が空けた朝、九門は通勤の電車の中でtwitterを見ていた。


 昨日の自分の呟きは、リツイート数3000を超えていた。記事のページビュー数は20万を超えている。WEBニュースの世界でいう「バズった」という状態の一歩手前くらいだろうか。どうやら相当に広まったようだ。

 過去に仕事で自分の記事がヤフートピックスに載った時、確かページビュー数は50万とか100万とかだったかな。
 あれの半分近くって考えると、なかなか大したもんじゃないか。

 電車の中なので、ニヤニヤしそうなのをこらえつつ、自分に反応した様々なツイートを眺める九門。


 だが、直後に今度は背筋が凍ることとなる。


 昨日の決勝戦のコートに立っていた、とある選手のアカウントに、非難めいたコメントが幾つも寄せられているのを発見したのだ。

 九門が昨日、名指しでそのファウルを「勝敗の分かれ目」として指摘した選手だった。

 その選手は、普通に夕食の写真をアップしていただけなのだが、どうやら九門の記事を読んだ何人かにとっては、見逃せなかったらしい。

「のんきにメシ食ってる場合か。アンタが決勝戦の戦犯なんだぞ」
「あそこであのファウルはいただけない。プロの自覚はあるのか」
「反省の言葉くらいあってもいいのでは?」


 ドクン…!!!

 久々の感覚だった。ソワソワして、汗が噴き出してきた。


 まさか、記事一本でこんなことになろうとは……。

 九門は自分の影響力を思い知った。

 消そう、このツイートはダメだ。
 自分の呟きひとつで、選手がこんな目に遭うとは。

 脇に汗を感じながら、削除のボタンを押そうとしたその時、九門のアタマにある二文字が浮かんだ。

―― 炎上

 そうだ、ここでヘタに削除したら、それはそれで色々起きるんじゃないだろうか。
 「自分の発言に責任を持て」だの「逃げるな、卑怯者」だの、叩かれる画が容易に想像できる。
 とはいえ、このままではいられない。


 出社した九門は、仕事そっちのけで、ブログを更新した。

 同選手の好プレイを称える記事を大急ぎで書いたのだ。終盤のファウルは確かに大きなミスだったが、それ以外のパフォーマンスは悪くなかったのだ。そこにも目を向けてほしい、と。

 そのキーボードを叩くスピードたるや、間違いなく自分史上最速だっただろう。そして、その鬼気迫る表情たるや、隣の席のケンさんもビックリするほどだった模様。

「どうしたの、九門君、大慌てで」
「いや、何でもないっす、スンマセン」
「すごい集中力だね。なんか急ぎの仕事なら手伝うよ?」
「大丈夫っす、何でもないっす」

 心配して声をかけてくれているのは分かるのだが、正直ウザかった。今は会話しているときじゃないのだ。

「何かあったら言ってね」
「はい、大丈夫っす、何でもないっす」

 ケンさんには顔を向けず、画面を凝視したまま、同じ言葉で何度も返事をする九門。その顔には「ほっといてくれ」と書いてあったのだろう。ケンさんもさすがに察して、それ以降九門には話しかけなかった。


 ポチッ。

 記事を発信し、ツイートも投稿し、九門は大きく伸びをした

「ああああぁぁ〜〜〜」
 雑誌の校了時を超えるレベルの伸び。

 これで何とか世間の声が軌道修正されてくれれば。
 
 九門は祈りつつ、いったんブログ管理画面を閉じた。


 その後、15分おきに九門はtwitterとブログの数字を確認した。昼休みには、検索機能も使ってくまなく調べてみた。


 ほとんど広まっていない。

 なぜ?


 敗因を指摘した記事やツイートはあんなに一気に広まったのに、好プレイを並べた記事は、まったくそうならない。

 なぜ?


 九門はアタマを抱えた。

 九門は知った。自分が持つ影響力というものを。
 九門は知った。いや、知ってしまった。
 世間が飛びつく話題とそうでない話題の違いを。

 その残酷な事実を。



続く


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