男子バスケットボール日本代表
FIBAアジアカップ予選 強化合宿。
初日の練習は、大きな激突音で幕を開けた。
ドーン!!!!!!!
壁に男がぶつかる。
さいわいマット状の壁だったため、大事には
至らなかったものの、まるで格闘技かのような
激しい当たりだった。
「………。」
あまりの迫力に、体育館は静まり返った。
特にスタッフ陣は茫然としている。
ルーズボール争いで起きた、選手同士の交錯。
バスケットボールの試合においては特段珍しい
シーンではないかもしれない。大きな試合の
勝負どころなどでは、ままあることである。
大事な場面では、怪我も顧みず激しい当たりが
披露されることは少なくない。
が、
いまこの時間は公式戦の勝負タイムではない。
いや、公式戦どころか、そもそも試合でもない。
練習である。合宿初日の練習である。
それが、負けられない一戦かのような空気。
そして、スタッフ陣が驚いたのは、
その迫力だけではなかった。
壁に叩きつけられたのは、東京ペイサーズの
ベテランプレイヤー・与野壮一郎であり、
叩きつけた側に当たるのが、同じクラブ所属の
桜木花道だったのである。
桜木、倒れている与野に手を差し出す。
与野、少し首を振り、その手を握る。
桜木は、練習ゲームのルーズボール争いのなか、
日々試合と練習を共にしているチームメイトに
強烈に体をぶつけたのだった。
「………。」
静寂に包まれる体育館。
そこに、手を叩く音。
パンパンパン!!!
「…!?」
ヘッドコーチの大浜だった。
「おう、そういう練習をやってくれ」
佐戸 「はい」
樽瀬 「わかりました」
大浜の発言に、数名の選手は驚いていたが、
佐戸や樽瀬は先刻ご承知とばかりに頷いた。
赤木や牧、河田雅らも同様。
そういうことか、と目を合わせて頷いている。
スタッフ陣は言葉を失っていた。
(なんだ、この空気は…)
(スポーツの練習会場じゃない、まるで戦場だ…)
大浜 「桜木、俺が望んでいるのはその姿勢だ」
桜木 「戦いなんだろ?」
大浜 「そうだ」
パンパンパン!!!!
今度は、合宿中のチームキャプテンに
任命されている佐戸健一が手を叩いた。
「よし、3対3、続けよう!!!!」
「オウ!!!!!!」
ダム!!!!
キュキュッ!!!!!
ボールとシューズの音が再び体育館を鳴らす。
そして、次第に声も出始めた。
「よーーーっし、来い!!!!!!」
「ディフェンス、出ろ!!!!!!」
「空いた、こっちだ!!!!!!」
それは、盛り上げるための声というよりも、
主張するための声だった。
とりわけ、黄金世代の選手がそれを盛んに発した。
河田雅 「ヘイ!!! 中!!!」
黒部 「…!!」
ビッ!!
ボールがインサイドへ供給される。
ダム!!
河田雅がターンからリングに向かうその瞬間、
ドン!!!
ゴール下に忍び寄っていた深津が、
体を張って立ちはだかった。
オフェンスチャージを狙った守備だったが、
『ピピーーーッ!!!!』
スタッフが笛を鳴らす。
「ディフェンス!! ブロッキング!!!」
「いまのは深津のファウルだ!!!」
倒れている深津。
「はい」
河田雅、深津に手を伸ばす。
深津、その手を取り立ちあがる。
河田雅は、深津の尻をポンと叩き、
パスを出した黒部に注文を付ける。
「パス、もう少し早く。タイミングが遅いと、
いまみたいにヘルプが間に合ってしまう」
黒部 「ああ…」
「………。」
スタッフ陣は、依然として茫然とした表情。
(今度は河田と深津か…)
(そして河田…、初日から28歳の黒部に注文を)
練習開始後、フットワークやハンドリングなど
個人トレーニングの間は、和やかな空気もあった。
桜木の瞬発力に感嘆の声が上がり、
仙道のドリブルにはどよめきもあった。
パスワークからのシュート練習では、
シュートが決まるたびに声と拍手も起きた。
だが、対人練習になると空気が変わった。
3対3の一本目で、桜木が火をつけた。
この瞬間から、戦いの幕が上がった。
「これは…」
ビデオカメラを回す広報担当は息を呑んだ。
(大浜さん、久々に代表監督に就いたと思ったら、
これまでとは違う空気を持ち込んだ)
(いや、監督だけじゃない。選手たちもだ)
(やはりいままでとは違うぞ、今回の日本代表は)
大浜は、合宿最初のミーティングにて、
自分たちに必要なのは「闘争心」だと告げた。
自分たちの場所は自分たちで掴むのだと。
チームとしては、世界でのポジション獲得、
そして個人としては、代表選手の枠の争い。
30人の男たちは、初日から戦いを開始したのだ。
「悪くねえな、この面子は」
ヘッドコーチ、大浜元信。
日本の社会人トップリーグが「日本リーグ」と
呼ばれていた頃から、常勝クラブ・イサキ自動車の
監督として名を馳せる指導者である。
過去に2度ナショナルチームを率いた経験があるが
いずれも国際大会への出場は果たせなかった。
「全日本」から「日本代表」へと呼称が変わるなか、
何人ものヘッドコーチが誕生したが、五輪もW杯も
出場は果たせていない。また、アジアの舞台でも
優勝の栄冠は勝ち取れないでいる。
協会は、もう一度大浜に賭けることにした。
イサキ時代の主力がごっそり抜け、若い選手が
大勢を占める横浜ドリームスが、Bリーグクラブに
匹敵する戦力になっているのを目の当たりにして。
大浜は、10年ぶりに代表チームに返ってきた。
スタッフ陣、しみじみと語る。
「あのとき、大学生だった佐戸や森尾を代表に
選んだのは大浜さんだった」
「10年が経ったいま、佐戸たちがベテランの側だ」
「おそらくは、10年前の佐戸たちよりも大きな
可能性を秘めた世代を迎えて、もう一度挑戦か」
そして午後、
チームは5つのグループに分けられた。
Aチーム
01. 佐戸 健一 (三河マーベリックス 30歳)
09. 宮ノ腹 卓也 (横浜ドリームス 26歳)
15. 土屋 淳 (千葉ブルズ 22歳)
23. 赤木 剛憲 (川崎ニックス 22歳)
21. 矢野 貴修 (新潟キャバリアーズ 27歳)
30. 森重 寛 (青葉学院大/千葉B 20歳)
キャプテン:佐戸健一
Bチーム
02. 樽瀬 勇太 (大阪サンズ 29歳)
04. 牧 紳一 (千葉ブルズ 22歳)
12. 諸星 大 (琉球ウォリアーズ 22歳)
18. 神 宗一郎 (青葉学院大/横浜N 21歳)
19. マッカーシー E(三河マーベリックス 32歳)
27. 富沢 啓和 (名古屋スパーズ 27歳)
キャプテン:樽瀬勇太
Cチーム
06. 藤真 健司 (栃木ピストンズ 22歳)
07. 森尾 毅彦 (東京ペイサーズ 30歳)
08. 池山 隆彦 (渋谷ホークス 27歳)
17. 仙道 彰 (横浜ドリームス 21歳)
20. 若穂 正人 (大阪サンズ 29歳)
29. 河田 美紀男 (深沢体育大/栃木P 20歳)
キャプテン:仙道彰
Dチーム
05. 深津 一成 (横浜ネッツ 22歳)
10. 松本 稔 (栃木ピストンズ 22歳)
14. 黒部 光久 (京都ジャズ 28歳)
16. 花形 透 (琉球ウォリアーズ 22歳)
26. 古谷 聡 (名古屋スパーズ 29歳)
28. 杉山 祥太 (東京ペイサーズ 25歳)
キャプテン:杉山祥太
Eチーム
03. 沖野 政人 (名古屋スパーズ 28歳)
11. 三井 寿 (横浜ネッツ 22歳)
13. 与野 壮一郎 (東京ペイサーズ 31歳)
24. 桜木 花道 (東京ペイサーズ 19歳)
22. 河田 雅史 (川崎ニックス 22歳)
25. 浜崎 昭典 (大阪サンズ 33歳)
キャプテン:桜木花道
桜木 「ぬ?」
仙道 「え?」
桜木と仙道は、同じような言葉を発した。
これから4日間、午前にフィジカルトレーニング、
午後にゲーム型の練習、という形式でメニューを
進行していくこととなる。
スタッフ陣、ニコリ。
「面白いチーム分けじゃないか」
「すべてベテランと黄金世代の混成チーム」
「こうして眺めていると色んな狙いも見えてくる。
最年長と最年少が同じチームにいる、とかね」
『ビーーーーー!!!!!!!!』
ブザーが鳴り、ゲーム開始。
ルールは、10分ハーフ。交代は自由。
第1コートでは、Aチーム×Bチーム、
第2コートでは、Cチーム×Dチーム。
Eチームは、最初は見学となった。
桜木 「いきなり休憩か、ツマラン」
浜崎 「まあ、そう言うなよ、キャプテン」
桜木 「ぬ?」
三井、眉間にシワ。
「ったく、なんでお前がキャプテンなんだよ。
しかも、よりによって俺のチームって…」
桜木 「ひがむな、ひがむな」
三井 「誰がだ」
与野、ニコリ。
「何か監督の考えがあるんだろ。なんて言いつつ、
保護者のように俺とジャマさんがつけられたが」
桜木 「ホゴシャ!?」
三井 「その通りだろ」
浜崎 「はっはっは、面白いチームだわ」
河田雅 「沖野さん、ご無沙汰してます」
沖野 「おう、よろしく頼むな」
三井、ニヤリ。
「お、深体大ラインか。あの河田雅史といえど
大先輩の前じゃ大人しいってか?」
与野 「オレ、拓翼だけど」
三井 「……!!!!」
(忘れてた…!!!!)
三井 「ざっす!!!!!!!!」
河田雅 (なんだその「ざっす」ってのは)
沖野 (まあ、面白いチームなのは確かだな)
そのとき
『ピピーーーーーーーーーーッ!!!!』
「………!!!!!」
笛の音。
佐戸と樽瀬が倒れている。
スタッフ陣、今日何度目か、茫然の顔。
「あ、あの二人まで…」
「凄い肉弾戦を…」
浜崎 「ほう、アツいな、あのふたり」
与野 「二大司令塔、さっそくバチバチだねえ」
河田雅 (そこに牧もいる、なるほどな…)
スタッフ陣を驚かせたことは、もうひとつ。
第2コートである。
隣のコートで激しいぶつかり合いを知らせる
笛の音が鳴り響いたにもかかわらず、
何もないかのようにゲームが続いていたのだ。
深津 「一本、行こう!」
藤真 「ディフェンス!!!!」
「オウ!!!!!!!」
大浜、改めて。
「コイツら、面白れえじゃねえか」
続く
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・・・しかったり?
まあ、仙道をやる気にさせるなら、それくらいの役回りを与えておいた方がいいだろうし
チームが困った時は、自然と、仙道の声が安心感を与えるしな
そして、桜木花道
湘北の三年時に、キャプテンの経験はあれど、チーム内最年少という立場での抜擢か
普段、ゲイムメイクといった役回りをすることが少ないだけに、どれだけ試合全体を俯瞰して見られるのか(河田兄なら、卒なくこなすのだろうけど)
あるいは、ここでも、かつて猛威を振るった“野生の勘”が全開となるのか(三井や河田兄、同じペイサーズの与野にとっては、“通常運転”かもしれないが、果して、浜崎と沖野は付いていけるのか)
一応、「Aチーム」として選ばれているだけあって、5チームの中では、佐戸がキャプテンを務めるチームが、一番バランスがいいが、今後、どうシャッフルされていくのか
肉弾戦となると、若い分、黄金世代が有利なだけに、オジサン世代の最後の意地も含めて、注目だな
Kさんいつもありがとうございます!
日本代表の合宿が始まり大浜監督と集められた30人のメンバー。
初日の3on3の練習中でルーズボール争いで花道と与野さんが接触!続き、山王コンビも闘争心を、だしベテランに負けじと熱を出してます!この空気、熱を花道が作り出し、続く感じ良いですねぇ。大浜監督にとっては3回目の国際試合への挑戦!燃えないはずがない!
午後からは6人を5チームに分かれての10分ハーフの試合きたー!
Aは佐戸さんと若手に土屋•赤木•森重、Bには樽瀬•海南コンビ牧&神と愛知の星諸星。Cはベテラン森尾さんと藤真•仙道•河田弟。Dは山王コンビの深津&松本にメガネコンビの花形さんと杉山さん。
そしてEチームにはベテラン沖野さん、与野さん、浜崎さんに若手に三井•花道•河田雅史のチームきた〜!Eチームの三井•花道•河田雅史の爆発力はほんとすごそう!
なんと各チームキャプテンはC•Eチームは仙道と花道に!これはやばい!すごくワクワクします!
花道の保護枠で与野&浜崎がセットでつけられたとこと、与野さんが拓翼の先輩と忘れていたミッチーに笑いました笑
白熱した戦いを楽しみにしています!
A対Bと、C対Dを同時にやらないでよ。どっちも見たい!Eの会話も聞きたい!
そもそも桜木がキャプテン!?
ヒコイチ記者に全てを解説してもらうしかない!!
どんなキャプテンなのか気になる
ミッチーと花道が同じチームなだけでおもろくなるなw
そこで高三編ですよ!ねぇ宮益、木暮
何でそうしたのか何かわかる。上手く言えないが
楽しみです!!
三井笑った(笑
緊張感のある練習ゲームいいですね!
キャプテンは代表当確??
確信がある!!
キャプテン仙道だけど監督は藤真?
一番効率的にチームを動かせそう
樽瀬と桜木の絡み(あるいは対戦)で、いよいよ「足りない1つ」が明らかになるんでしょうか( ^ω^ )
この5人がスターターなら安心感あるな
そして、
24. 桜木 花道 (東京ペイサーズ 19歳)
年齢を修正しないあたり、何かを仕込んでますか?
ねぇ、Kさん!!!!!!?
間違ってないからね。
次回も楽しみです^_^
kさん、更新ありがとうございます!
てか仙道vs花道のキャプテン同士のマッチアップとかって
ありえる? 仙道-森尾ラインvs花道-三井もあるのか
(。・ω・。)ゞ
A中国、Bイオーストラリア、Cレバノン、、、とか
そんでEが日本代表の原型
Eが手こずりそうなのがDかも
牧ー神
やっぱ原作高校ラインが揃うと嬉しいですね…!
「モーリーなら、ここはこう動くぞ!」
三井「お前が森尾さんを語るな!」
(・・・なるほど。これで神に勝てる)
(なぜなら・・・同じメガネだからだ)
(日本代表のおぎやはぎと言わせる相方は木暮でも宮益でもない。お前だ、花形)
森重「うぃ〜」
赤木(勝負だ。桜木 河田 杉山さん)
赤木 花形のハイアンドローの進化
杉山 花形のハイアンドメガネ
ですよね。 4/1生まれだから
キャプテン花道と清田の絡みだけで飯食えるw
三井だって、清田が加わるって話になったら、大人しくしとらんわな
そして、それを、河田兄が無言で見つめる
藤真が嫉妬してそう(笑)
逆にPGとしては能力だよりにできない分深津の能力をアピールしやすいのか?
また、華やかなメンバーが揃っている分、藤真個人の能力はアピールし辛いか?
深津入ってほしいなあ
晴子は恋愛要素絡んじゃうし宮城参加してないからその辺が良さそう
場所は?
国体でもユニバでも実現しなかった最強トリオ!
想像できちゃうところも含めて最高ですね♪